昔あるところに、よく働く亭主とものすごい怠け者の女房がいました。亭主が一日中せっせと働いている間、女房はゴロゴロ昼寝ばかりしていました。
夏祭りが近づいてきたある日、女房は祭りに着ていく菖蒲帷子(しょうぶかたびら、夏用の麻の着物)が欲しくなりました。亭主におねだりすると「昼間は寝てばかりいるのだから、自分で作ったらどうだ」と、取り合ってくれませんでした。
怠け女房は「甲斐性のない亭主だ」と腹を立てながら、お隣さんから菖蒲帷子を借りてこようと思いつきました。さっそく隣の家に押しかけ、まずは「菖蒲帷子を見せてくれ」と言いました。
隣の働き者の女房は、菖蒲帷子を見せながら「これは寝る時間をさいて自分で作った着物だ」と説明しました。さすがの怠け女房も「貸してくれ」とは言い出せず、すごすご家へ帰っていきました。
夏祭りの日、怠け女房は新しい笠と帯を用意し、ボロボロの帷子を着て出かけていきました。働き者の亭主は「どうにかならないものか」と思案し、女房より先回りして、高い木の上に登りました。
そして、怠け女房が木の下を通りかかった時に、「帯良し、笠良し、身なり悪しー」と鳥の鳴き声のような甲高い声を出しました。怠け女房は「鳥にさえボロ着物を笑われている、もう祭りには恥ずかしくって行けない」と、家へ逃げ帰っていきました。
怠け女房は「来年こそは、二人で新しい着物を着て祭りに行きたい」と、翌日からは、まるで生まれ変わったように、よく働く女房になりました。
(紅子 2013-9-18 0:22)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 水澤謙一(未来社刊)より |
出典詳細 | 越後の民話 第一集(日本の民話03),水澤謙一,未来社,1957年10月10日,原題「帯よし笠よし身なりわるし」,採録地「岩船郡朝日村字釜杭」,話者「阿部操」 |
場所について | 村上の祭り(新潟県村上市村上、地図は適当) |
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