昔、敦賀(つるが)の橘(たちばな)の森に、お稲荷さんの社があって、そこに白ギツネが住んでいました。
お社の近くには、きれいな水が湧き出る池がありました。白ギツネは、不思議な神通力で水柱を作り、そこに自分の姿を映してはウットリしていました。
ある日の事、ふとやってきたお坊さんが、村人たちから寄付を集めてまわりました。そして、社の近くに小さなお寺を建てて、その寺の和尚となりました。和尚さんは、村人のために手作りで太鼓を作り、朝晩に時刻を告げるため太鼓をたたくようになりました。
ある晩の事、見慣れない女の人が和尚さんの枕元に現れました。女の人は、「私は社の白ギツネです。最近3匹の子狐を産んだのですが、太鼓の音を怖がるので子供が育つまでの間、太鼓をたたかないでくれませんか?」と訴えました。
翌日から、和尚さんは太鼓をたたかなくなりました。村人たちが和尚さんを心配して集まってきましたが、和尚さんはたたかない理由を誰にも話しませんでした。
その年の暮れ、寺の近くで山火事が起こりました。寺にも火の手が迫ってきましたが、なす術もありませんでした。すると、3匹の子狐を連れた白ギツネが現れて、池の近くで呪文を唱え始めました。
みるみるうちに池から大きな水柱が上がり、山火事めがけて降り注ぎました。こうして、キツネ親子のおかげでお寺もお社も焼けずに済みました。
感謝した村人たちは、キツネの社にお供えするようになりました。やがて半年もすると、子ぎつねたちも成長し、和尚さんも安心して太鼓をたたくようになりました。
(紅子 2014/4/27 22:29)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 福井のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 福井のむかし話(各県のむかし話),福井のむかし話研究会,日本標準,1977年12月10日,原題「たいことキツネ」,再話「山田敏文」 |
場所について | 浄蓮寺(福井県敦賀市元町17-5) |
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