No.1065
かきのせい
柿の精
高ヒット
放送回:0672-A  放送日:1988年10月22日(昭和63年10月22日)
演出:しもゆきこ  文芸:沖島勲  美術:しもゆきこ  作画:大西治子
宮城県 ) 32033hit
坊主の尻から柿が出てくる話

昔々、ある村に柿の木を庭にたくさん植えている家があった。

一方、この家の隣には、柿の木が一本もない貧乏なばあ様が住んでおった。ばあ様は常々、美味しそうな隣家の柿が食いてぇなあと思っておった。しかし、隣の婆さまはケチで、柿の実を一つたりとも分けようとはしなかった。

そんなある夜の事。ばあ様の家に、一人の入道坊主がやってきた。ばあ様が美味しい柿が食いてぇと言っていると、男は、それなら食わしてやろうと言って、台所へ行き皿を取った。

しばらくすると、男は、つぶれた柿の実のようなものを皿に盛って戻ってきた。そして、その皿の上のものをばあ様にすすめるのである。ばあ様が、言われるがままに食べてみると、これがすごくおいしい。ばあ様は、もっと食いてぇと言うので、男はまた台所の方へ行った。

ちょうどその頃。ばあ様の息子が家に帰ってきた。息子は、母親の家にいる入道坊主を見て、なにやら怪しいと思い、家の中をのぞいてみる事にした。すると・・・なんと、その男は皿に糞をした。そして、それを持って居間にもどり、あろうことかそれを母親に食べさせたのである。

息子はこれに激怒した。大事な親にあんなものを食べさせるなんて!息子は怒りのあまり、家から出てきた入道坊主をまさかりで殺してしまった。母親は息子の行動に仰天して、「何をするだ、この人はオラにおいしい柿を食べさせてくれたのに!」と怒った。そして、我が子が人を殺してしまったと思い、恐ろしくなった。

どうしょう・・・二人はその場に立ちつくした。明け方までそうしていたころと、男の遺体に変化が現れた。なんと、男はつぶれた柿の実に変化していたのである。それと同時に、あれほど実っていた隣の柿は、全部地面に落ちて食べられなくなってしまった。

きっと、あの男は柿の木の精霊だったのだろう。ばあ様があまりに柿を食べたがるので、おいしい柿を食べさせに、ばあ様の家にやって来たのかもしれない。

(投稿者: パンチョ 投稿日時 2012-8-22 1:18 )


ナレーション常田富士男
出典宮城のむかし話(日本標準刊)より
出典詳細宮城のむかし話(各県のむかし話),宮城のむかし話刊行委員会,日本標準,1978年06月10日,原題「カキの精」,採録地「牡鹿郡女川町」,話者「岩崎としえ」,再話「佐々木徳夫」
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※掲載情報は 2012/8/22 1:33 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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Perenna  投稿日時 2020/11/14 0:21
柿男については、佐々木喜善の著した「聴耳草紙」にも収録されていますね。

「昔々或所に奥さんと下女があった。其所の家の井戸端に柿の木があって、柿が甘さうに実つてゐた。下女はその柿が食ひたくて食ひたくて堪らなかった。何とかして一ツ喰ひ度いものだと考へてゐたら、或晩、表の戸を叩いて、此所あけろ此所あけろと云ふ者があった。下女は、ハテ夜中に誰だべと思って、今誰も居ませんから開けられないと断ったが、いいから開けるいいから開けろと云ふので下女は怖々さうッと戸を開けたら、背のとても高い真赤な色をした男が立ってゐた。下女はもう青くなってブルブル慄へてゐると、其真赤な男が室の中さ入って来て、串持って来いと云った。下女が串を持って行くと、赤い男は、俺の尻くぢれ、俺の尻くぢれと云ふ、下女が慄へながら男の尻をえぐると今度は、なめろなめろと云って帰った。下女がその串をなめたらとても甘い柿の味がした。」

相手に自分の尻をほじらせて舐めさせたり、出したばかりのうんちを食べさせたりするなんて・・・
なんとなく変態的な感じがして、おもしろい昔話ですね(笑)
猫坂  投稿日時 2020/9/23 1:38
タンタンコロリンは、仙台市の二十人町に出た入道風の大男で、腹から柿を道端に落としていく妖怪。

赤い顔をした男が、柿男。
夜に雨戸を叩いたりする。

柿の精は、この話のように食いたいなあ…と眺めている下女や婆や小僧の所に行って、ちょっと尻をほじらせたり舐めさせたりなどする。

みんな柿の化け物だけど、別の妖怪なのです。
杜子  投稿日時 2017/2/8 1:44
仙台では柿ノ精や妖怪をタンタンコロリンと呼ぶよ。
ゲスト  投稿日時 2016/2/27 23:23
息子が柿の精を殺したばかりに、隣の木までダメになるとは…
これでもう、来年からはお互いに柿を食べられなくなるのでしょうか。
今年の実がダメになっただけで、来年はまた実をつけるのでしょうか。
ゲスト  投稿日時 2014/10/13 23:44 | 最終変更
隣の家のよくばり爺さんだったか婆さんに柿をくれと言ってもくれず、
それを哀れに思った柿の精が恵んでくれる話
柿の精が死んでしまい、隣の家の柿は次々とおちてしまった
…という導入部分とオチがあったと思うんですが
__
導入部分と最後のエピソードを追加しました。(2015/8/3)
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