昔、ある村に薬師様がありました。村の人たちはたいそう大事にしておりました。子供たちはお堂のそばで、雪合戦などをして毎日遊んでおりました。その子たちの一人が権兵衛。
ある日、権兵衛の親父の甚兵衛さんが村の寄り合いに出て、村の世話役に選ばれました。上機嫌で薬師堂のそばを通りましたら扉が開いている。中をのぞくとなんとしたことか、薬師様の像がない。
権兵衛たちがお堂のそばで遊ぶうち、薬師様と一緒に遊ぼうという話になって、引っ張り出したのでした。遊ぶうちに日が暮れたのか薬師様は雪の中で置き去りになっていたのです。薬師様は元に戻されたものの権兵衛は親父から倉に閉じ込められてしまいました。どういうわけかその夜から親父さんの目が見えなくなってしまったのです。
目が治るよう甚兵衛さんはおこもりしました。21日目のこと、息子の権兵衛の姿が見えなくなり大騒ぎになりました。甚兵衛さんは目は治らなくていいから息子の居場所を教えてくださいと薬師様にお祈りしますと、薬師様が姿を現し、今後私が子供と遊ぶ邪魔をするなと申され、甚兵衛の目が見えるようになったのです。そして、権兵衛が薬師様のお堂で親父の目が治るように祈っていた感心な子であるぞと、居場所を知らせてくれました。甚兵衛が早速お堂に行ってみると果たして権兵衛が中で寝ておりました。
権兵衛さんは子供の好きな薬師様のために、お堂の扉を取り外しました。子供らは再びお堂の回りで毎日遊び、薬師様はお堂の中からそれを見てござった。
(投稿者: みけねけ 投稿日時 2012-6-17 16:19 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松谷みよ子(未来社刊)より |
出典詳細 | 信濃の民話(日本の民話01),信濃の民話編集委員会,未来社,1957年06月30日,原題「子供の好きな薬師さまの話」,採録地「北安曇郡南小谷村」,話「宮入某」,再話「松谷みよ子」 |
場所について | 北安曇郡小谷村(地図は適当) |
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