No.0624
ありのみやじょう
アリの宮城

放送回:0391-A  放送日:1983年05月07日(昭和58年05月07日)
演出:フクハラ・ヒロカズ  文芸:沖島勲  美術:西村邦子  作画:フクハラ・ヒロカズ
鹿児島県 ) 14875hit
ない袖は振れぬ

昔、種子島に魚売りの吾一という心優しい働き者の男がいました。

ある時、大雨が降り、雨に流されそうになっていた一匹の蟻を助けてあげました。翌日、吾一が同じ場所を通りかかると、見たことも無い大男が立ちふさがって「昨日は蟻を助けてくれてアリがとう」と声をかけてきました。

吾一は大男に連れられるまま、崖にあった小さな穴に入ってみると、不思議なことに穴の中には見た事もない世界が広がっていました。その先には立派な蟻のお城があり、蟻のお姫様から大変な歓迎をうけました。

すっかりご馳走になった吾一が、そろそろ家に帰ろうとすると、蟻のお姫様が立派な小袖(女物の着物)をお土産にくれました。「この小袖を着て袖を一振りすると、望むものが何でも出てきます。ただこの着物は誰にも見せてはいけませんよ」と言って、吾一を家へ送り出しました。

家に帰った吾一は、小袖を壁の穴に隠して一人だけでコッソリ使いました。仕事もやめ、なのに立派な着物を着て昼間から酒を飲んで遊んでいる吾一を見て、妻は怪しみました。

妻は吾一が町へ遊びに行っている間に、壁に隠してあった美しい小袖を見つけ出しました。妻はこの小袖を「愛人の着物」と勘違いして、嫉妬心から囲炉裏にくべて燃やしてしまいました。小袖はみるみるうちに燃え上がり、その炎は吾一の家にも燃え移りました。

吾一の家はすっかり燃え尽きてしまい、小袖も袖のところが燃え落ちていました。吾一は「無い袖は振れぬ」とすっかり落胆しましたが、また魚売りの仕事に戻り、夫婦仲良く末永く暮らしましたとさ。

(紅子 2012-9-25 19:36)


ナレーション市原悦子
出典下野敏見(未来社刊)より
出典詳細種子島の民話 第一集(日本の民話33),下野敏見,未来社,1962年08月31日,原題「アリの宮城」,採録地「中種子町野間竹星野」,話者「鎌田末次」
場所について種子島の中種子町野間(地図は適当)
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地図:種子島の中種子町野間(地図は適当)
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※掲載情報は 2012/9/25 19:36 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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猫  投稿日時 2021/4/1 5:54
フクハラワールド全開のとても面白い作品でした。吾一が穴の中に色々隠すシーンがとても好きでした。よほど大きな穴だったのでしょうね(笑)
いくら見せるなと言っても、ワンルーム?らしき家では少し無理があるような気がしますが…
座天寺キッド  投稿日時 2012/9/26 8:15
この作品もなんでこのタイトル?と思う。
例えて言うと浦島太郎の物語に『龍宮城』とタイトルを付ける様なもの。
『アリのくれた小袖』とかの方が物語の意味が通じるのでは?

そんなこの年、フクハラ・ヒロカズ還暦。


araya  投稿日時 2011/12/8 19:45
アリの宮城『種子島の民話』(下野敏見,未来社)より、採録地は中種子町野間竹屋敷とのことですので、地図情報の仮ポイントとして鹿児島県熊毛郡中種子町野間の中種子町役場にしています。

http://g.co/maps/38dkt
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