昔、屋久島の山奥には「山姫」という者が住んでいるという噂があった。山姫は大変美しい女で、山姫に出会ってもし山姫が笑うのにつられて笑ってしまうと、二度と山から帰れないと言われていた。
屋久島の山のふもとにはたすけときすけという2人の若い竹細工の職人がいた。ある日2人は竹を取りに山へ入った。
そうしてどんどん山を登っていき、頂上まで来てみると、そこには今まで見た事もない立派な大竹がたくさん生えていた。それを見た2人は、中でも特に立派な竹を選んで夢中で切っていた。すると急に強い雨が降り出したので、2人は竹の木陰に隠れて雨宿りし、雨が止むのをまった。
すると山の奥の方から人の笑い声のような音が聞こえた。2人は気のせいだと思っていたが、だんだんとその音ははっきりと「ほっほっほっ…」と聞こえてきた。そして2人が振り返ると、そこには美しい女がこちらを見て笑っていた。それは間違い無く山姫だった。
山姫はさらに声を挙げ、大きな声で笑い始めた。 たすけはそれにつられたか、少しずつ笑い始め、やがて山姫と同じく大きな声で笑い始めた。すると山姫は突然宙に浮き上がった。それに驚いたたすけが叫んだ瞬間、大きな轟と共にたすけに雷が落ちた。そしてきすけが顔を上げてみるとたすけも山姫もいなかった。 どこを探してもたすけは見つからなかった。
仕方なく、きすけは山を下りることにした。すると途中の沢に、たすけが怪我をして倒れていた。きすけは急いで近寄るとたすけに声をかけると、たすけは生きていた。この話を聞いた村人達は「それは山姫に違い無い」と言って、これを恐れ誰一人その谷へ近付くことはなかった。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 下野敏見(未来社刊)より |
出典詳細 | 屋久島の民話 第二集(日本の民話38),下野敏見,未来社,1965年02月25日,原題「山姫」,採録地「上屋久町」,話者「荒木謙次郎、中島菊助、岩川貞次、浜崎三郎、森熊助、岩川シマ、田中政一」 |
場所について | 山姫の住む山(出典元簡易地図から予測) |
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