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No.0652
うりゅうじまとえびすさま
瓜生島とえびすさま
高ヒット
放送回:0409-B  放送日:1983年09月10日(昭和58年09月10日)
演出:前田康成  文芸:沖島勲  美術:小関俊之  作画:前田康成
大分県 ) 40651hit
あらすじ

昔、九州別府の湾には、瓜生島というきれいな島が浮かんでいたそうだ。

瓜生島には、島の守り神として恵比寿さまが祀られており、この恵比寿さまには不思議な言い伝えがあった。恵比寿さまの顔が赤くなったら、島は沈んでしまうというものだった。反対に、恵比寿さまを大事にしていればご利益もあり、魚もたくさんとれるということだった。そのため島の人々は、毎日交代でお供え物をし、恵比寿さまを大事にしていた。

ところが、どの村にも人を困らせては、それを喜ぶ者もいるもんだが。瓜生島にも、悪太郎(あくたろう)と島中から呼ばれ、つまはじきにされているわんぱくな若者がいた。悪太郎は、毎日働きもせずブラブラしては次々に悪さをして、島の人々が怖がったり、驚く姿を見て喜んでいるのだった。

ある日悪太郎は、島の人が恵比寿さまにお供えした団子を横取りしているところを、島の人に見つかり袋叩きにされ酷い目にあわされた。怒った悪太郎は、仕返しをすることにした。その夜、悪太郎はこっそり恵比寿さまの顔に紅がらを塗りつけ真っ赤にした。塗り終わると、突然グラグラと地面が揺れ、地響きが起こり、恵比寿さまが大岩もろとも、地上高くに突き出した。だが悪太郎は、これを単なる地震のせいとしか思わなかった。

次の日の朝。島の人々は腰をぬかさんばかりに驚いた。
「ややや、恵比寿さまのお顔が真っ赤じゃ」
「こんなに岩が盛り上がって。きっと悪い知らせじゃ」
さあ大変。島中大騒ぎになった。島の人たちは先を争うように、船を出して逃げ出した。

不思議なことに、悪太郎が恵比寿さまにいたずらをしたその日から、毎日地鳴りが起こり、島全体が揺れ始めた。そのため、瓜生島に愛着があり、最後まで残っていた人たちも恐ろしくなり、島を抜け出した。そうして残ったのは、悪太郎ただ一人となった。「臆病もんの慌てもんが。わしが紅がらを塗ったとも知らんで逃げ出したぞ。島が沈んだりするもんか。2、3日もすればまた恐る恐る島に戻るじゃろうて」悪太郎はそう思っていた。

その時、今までになく大きく島全体が揺れ始めた。島の向こう岸の別府の浜にある、高崎山、それに続く、鶴見岳、由布の山々が一斉に火を噴き、火の柱が空を焦がした。その夜はさすがの悪太郎も不安になり、家の中で小さくなっていた。「こりゃあひょっとして、本当に島が・・・」

真夜中のことだ。海の水がみるみるうちに黒々として、その上を白い三角波が走り去った。
大津波が島を襲ったのだ。「ああ・・許してくれ、わしが悪かった。許してくれ・・・」瓜生島は別府の海の底へ呑まれていった。津波が引いた後には、ドロドロと濁った海が広がっているだけだった。

(投稿者: 十畳 投稿日時 2011-8-4 17:30 )


ナレーション常田富士男
出典大分のむかし話(日本標準刊)より
出典詳細大分のむかし話(各県のむかし話),大分県小学校教育研究会国語部会,日本標準,1975年10月01日,原題「瓜生島とえびすさま」,再話「大塚俊英」,大分県の民話、別府の伝説と情話
備考瓜生島は、安土桃山時代に1日にして沈んだとされている島。
場所について別府湾にあったとされる瓜生島(地図は適当)
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地図:別府湾にあったとされる瓜生島(地図は適当)
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このお話の評価8.8824 8.88 (投票数 17) ⇒投票する
※掲載情報は 2011/8/5 1:44 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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ゲスト  投稿日時 2022/2/2 17:26
恵比寿さま、アンダーバーに顔が似てるような…
気のせいか!
ジュドー  投稿日時 2022/2/2 12:35
瓜生島について、NHKにブラタモリとかで本当のところを解明して欲しい。
フサフサフサハサ  投稿日時 2020/7/30 22:17
神仏に悪戯をした屑男にふさわしい最期ですね
もんた  投稿日時 2020/7/29 18:43
津波には出あつたことがない自分にはためになります。
Perenna  投稿日時 2020/4/17 0:16
似たような昔話は徳島県にも伝わっています。
「阿波の民話・第2集」(未来社、武田明編)には「お亀千軒」という民話が収録されています。
昔は徳島の東の亀磯は一つの島でしたが、漁師の家が千軒もあったそうです。
それでお亀千軒といい、島には夷(えべす)さんを祀っていました。
一人のおばあさんがその夷さんを信心して毎日お参りしていました。
ある晩、夢のおつげで、もし夷さんの顔が真っ赤になったらこの島は海に沈むと言われます。
おばあさんは村の人たちにこのお告げを知らせますが、村のいたずら者の若衆がふざけて、紅がらを夷さんの顔に塗りたくります。
あくる日、夷さんの顔が真っ赤になっているのを見たおばあさんは、家中の者を連れて島から逃げ出します。
村の者は若者のいたずらを知り、みんなでおばあさんの一家を笑いものにします。
ところが二、三日して大きい地鳴りがしたかと思うと、ほんとうに島は海の中に沈んでしまいました・・・

この伝説は「徳島市郷土史編」(昭和7年)という本にも詳しく記載されています。(コマ番号71/168)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1191441/71

大分県の瓜生島の伝説とは、どのような関係や共通性があるのでしょうか?
もんた  投稿日時 2020/2/3 6:41
覚えておかないといけないと思います。地震にはよくあいます。
owl  投稿日時 2019/12/28 19:44
海面を這うように迫り来る火砕流。

タラン!!急速転身!!瓜生島から離れろ!

波動エンジンワープ出力!瓜生島より急速離脱!

間一髪デスラーの三段空母以下ガミラス艦隊は影響圏外に脱する。

総統!久光島が別府湾から離れて行きます。瓜生島と久光島は二連島です。瓜生島が没しバランスが崩れた為久光島は暴走を始めたものと考えられます。

久光島を追え。決して見失うな!

owl  投稿日時 2019/12/28 19:20
大分県人です。
昔話としてよく聞かされました。
しかし由布鶴見高崎と噴火したとなると湯布院別府西大分は壊滅でその様は遊星爆弾攻撃と言うよりガミラス本星の最期のような有様になると思います。

リメイクするとしたら
間一髪噴火影響圏から離脱した船上で膝を尽き動揺を隠せない村長。立ち尽くし大粒の涙を零し号泣する漁民。
いつかは没する運命にあった島とはいえこんな最期を迎える事になるとは...。

悪太郎はボラー連邦のベムラーゼにようにずる賢いが頭は悪いので降り注ぐ火山弾に追い詰められる中海に没して貰いましょう。




ゲスト  投稿日時 2018/7/20 22:16
瓜生島の沈没は史実なんだよな。コワイ
ゲスト  投稿日時 2017/4/16 13:24
神様になんか恨みでもあんのかよwww
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