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No.0164
てんぐとしょうやさん
天狗と庄屋さん

放送回:0102-A  放送日:1977年09月24日(昭和52年09月24日)
演出:児玉喬夫  文芸:沖島勲  美術:下道一範  作画:阿部明
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あらすじ

むかし、ある村に立派な屋敷に住む庄屋さんがおった。

庄屋さんの屋敷は、村人が気軽に入って来られるよう入口の扉はとっぱらってあったそうな。この庄屋さん、村人を集めては、得意の弓や、趣味で集めた様々な品物の話をするのが大好きじゃったんじゃと。

さて、この村の悩みの種は、裏山に住む天狗が悪戯をすることじゃった。例えば、「子供が川に落ちた!」という声に、庄屋さんや村人達が駆けつけてみると、子供は川になんぞ落ちとらん。仕方なく庄屋さんが屋敷に帰ると、大事な品々が盗まれておる。こんなことが何度もあり、村人達もすっかり怒ってしもうたそうな。

そんなある夜、庄屋さんは下男が裏口で倒れているのをみつけた。聞けば、裏庭で怪しい物音がして恐ろしい顔の天狗が現れたと言う。そこで庄屋さん、弓を持ち出して門から出て行こうとする影を射た。矢は天狗の羽にあたり、天狗は片方の羽だけで山へ逃げて行った。

次の日、庄屋さんの屋敷に気の弱そうな男がやって来た。男は「私は裏山の天狗です。どうぞ羽を返して下さい。」と言うたそうな。下男は、この前見た天狗とはちょっと顔が違うなと思うた。そうして天狗は悪戯をやったことは認めたが、盗みの方は断じてやっていないと言い張ったんじゃと。怒った庄屋さんは天狗を納屋の柱に縛りつけてしもうた。

じゃがその夜、また怪しい人影が現れて屋敷の品物は盗まれた。天狗は盗人ではなかったのじゃ。庄屋さんは天狗に謝り、これからは悪戯はしないと約束させて羽を返してやった。

天狗は庄屋さんにお礼を言い、屋敷の門に盗人を捕まえるまじないをかけて、帰って行った。それから何日かして、門の所で金縛りになった盗人が捕まった。この盗人、天狗以上に天狗のような顔をしておったそうな。

それから村にはもう二度と盗みは起こらなかった。そうして庄屋さんの家の門は、相変わらず開けたまんまにしてあるそうじゃ。

(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2012-8-18 22:54 )


ナレーション市原悦子
出典市原麟一郎(未来社刊)より
出典詳細土佐の民話 第一集(日本の民話53),市原麟一郎,未来社,1974年06月10日,原題「天狗と庄屋さん」,採録地「宿毛市」,話者「岡本雄二郎」
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※掲載情報は 2012/8/18 23:12 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
3件表示 (全3件)
Perenna  投稿日時 2021/9/28 22:46
この昔話の詳細な情報を見つけました。
「日本の伝説36・伊予の伝説」には次のように書かれています。
「城辺町から高知県宿毛行きのバスで南へ下ると一本松町である。ここには標高1065メートルにおよぶ篠山があり・・・戸たてずの庄屋として知られる蕨岡主人(わらびおかもんど)も、篠山麓の正木に住んでいた。
蕨岡主人はもともと温厚実直な男であったが、ある日突然にご神託をうけ、屋敷内に社(やしろ)を造ったが、のちにこれを篠山に移し、現在の篠山神社になったと伝えられる。
何代かのちの蕨岡助之丞は篠山権現をことのほか信仰していたが、篠山に住む天狗にあざけり笑われる。腹にすえかねた助之丞は天狗を射落としてその翼をとる。すると天狗が、「もし翼を返してくれるなら、この家にはずっと泥棒が入らぬようにする」と泣いて詫びる。
それからというものは蕨岡家、盗賊などの災難にあうこともなく九十数代もの長い間、この地方きっての旧家として栄えたという。」

やはりこの昔話は、愛媛県の伝説らしいですね。
ゴンザ  投稿日時 2020/7/1 21:56
まあ、岐阜の昔話なのに長野の民話に入ってる狐檀家や広島の昔話なのに山口の民話に入ってるみょうがの宿みたいな話もあるからね。地形的には愛媛で正解だと私も思います
Perenna  投稿日時 2020/6/30 22:47
この昔話の現地情報についてです。
出典の「土佐の民話・第一集」には次のように書かれています。
「宿毛から北の方へ向うて、伊予との境に近いところに、正木という小さな部落がある。ここの部落の庄屋さんは、なかなか出来たひとであった上に、弓の名人でもあった。さて、近くの山の一本松に、天狗がすんじょった。しょうまっこといたずらもんで、部落へ飛んできてはわるさをするき、みんな困らされちょった。」

正木という地名は宿毛市ではなくて、北隣りの愛媛県南宇和郡一本松町にあったそうです。
現在では愛媛県愛南市正木となっています。
高知県宿毛市の民話というよりは、愛媛県の民話なのではないでしょうか?
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