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No.1091
きえたかぶらや
消えたかぶら矢

放送回:0688-A  放送日:1989年02月25日(平成01年02月25日)
演出:杉井ギサブロー  文芸:杉井ギサブロー  美術:安藤ひろみ  作画:江口摩吏介
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あらすじ

昔、広島の三段峡(さんだんきょう)のある戸河内(とごうち)の遊谷(あぞうだに)にまだ村も無かった頃のことでした。

この遊谷の上(かみ)の方に「同助(どうすけ)」という男がどこからかやってきて住み着き、同じ頃に谷の下(しも)には「勘助(かんすけ)」という男が住み着きました。2人とも弓を射るのが匠で、狙った獲物は逃さないという腕前でした。

そして狩りの最中に2人はついに顔を合わせました。お互い「自分が一番」と思っている弓の腕を競い合い、毎日毎日獲物を捕って捕って捕り続けました。こうした乱獲が原因で遂に2人の周りから獲物がいなくなってしまいました。

ある夜のこと、2人は互いの家に「矢文」を飛ばしました。決着をつけるため、満月の夜に『かぶら矢』を使った決闘する事になったのです。『かぶら矢』というのは小さな穴を開けた空洞の鹿の角や木材を先端に付けた矢で、空に向かって射ると高い音を響かせて飛ぶ。狩りや戦の時に合図に使ったり、相手を脅かすときに使う特別な仕掛けのある矢のことです。

決闘の方法はお互い谷の左右に立ち、かぶら矢を月に向かって同時に射る。そして空の上で両方の矢を互いにぶつかり合わせて先に地面に落ちた矢の方が負けで、この地を去るという決まりでした。ところがぶつかって絡み合った2つの矢はグングンと空に昇ってなかなか落ちてきませんでした。

2人は谷を駆け下りていくうちに谷底でガツンとぶつかり、お互いしばらく睨み合っていましたがついには2人とも笑い出してしまいました。
「どっちの矢も!」「落ちてこねえ!」
「どうしたんだろう・・・」「さあ・・・」
2人のかぶら矢は何処へ消えたのか、それっきり落ちてきませんでした。
「こりゃあ仕方ねえ・・・」「この勝負・・・」
『引き分けじゃなあ~~~~アハハハハハハ!!!』

こうして2人はすっかり打ち解け合い、それからは仲良くこの土地を切り開き村の基(もと)を作ったということです。

(投稿者: のんの 投稿日時 2012-2-17 23:42 )


ナレーション市原悦子
出典広島の伝説(日本標準刊)より
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追加情報
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※掲載情報は 2012/2/18 1:29 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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日清皿太夫  投稿日時 2021/10/16 20:22
 "キャッツ&カンパニー"みたいなキャラクターを全編で動かし、シリアスな効果音も笑いを取るために使う。近年深刻化している熊の急ターンもつい気持ち良く観てしまいます。
 にらめっこだけに台詞と効果音を排し一分半も費やしているけれど、キャラクターはちゃんと演技していて画面が「もつ」のが凄かった。アップでなおかつ絶妙な割合でたんこぶが映り込んでいるせいで、視聴者が先に負けちゃう(笑)声をアテたお二人も笑いを堪えるのに苦労したのではないでしょうか。

 「消えたかぶら矢」は技を極めた二人がより高次の存在を意識して争いを辞める映画『ウォッチメン(2009年)』箱庭版的なお話。昭和天皇が崩御したこの年、ソ連崩壊・冷戦終結の準備が着々と進む中でこの話が放送されたとは、まことに感慨深い。
 『昔ばなし』では仲直りを爽快に描いたものもあれば、No.0499「大懸山のうわばみ」のように憎悪だけでなく尊敬の念まで抱かせる敵を登場させるお話もありますね。杉井Dが『ガラスの仮面』をやっているから言うのではないけれど、好敵手は得難い。
のんの  投稿日時 2012/2/17 23:42 | 最終変更
このお話は狩りをする動物たちのリアクションが面白いです!!
拍手をしたり、的を持ったり!!!
私はかぶら矢をこのお話で知りました。
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