トップページ >  お話データベース >  東北地方 >  宮城県 >  ぶよの一時三年
No.1112
ぶよのいっときさんねん
ぶよの一時三年

放送回:0701-B  放送日:1989年06月03日(平成01年06月03日)
演出:しもゆきこ  文芸:沖島勲  美術:しもゆきこ  作画:大西治子
宮城県 ) 15069hit
あらすじ

昔々、仙台は宮城野の山奥に太一(たいち)と与茂吉(よもきち)という二人の木こりが住んでいた。

ある夏の日、いつものように与茂吉は太一と一緒に仕事をしていた。ところがこの日、与茂吉は竹筒に水を入れてくるのを忘れたので、下の沢に水を汲みに降りて行く。

沢の水を手ですくって飲んでいると、与茂吉の顔のまわりにぶよが飛んできた。
与茂吉がぶよを手で払おうとすると、なにやら川上から流れてくる物がある。与茂吉が手に取ってみると、それは漆(うるし)に金銀で模様をほどこした、なんとも立派な杯だった。与茂吉は、杯がどこから流れて来たのか不思議に思い、川の上流に向かって歩いて行く。

しばらく歩くと、そこには与茂吉が見たこともないような立派な御殿が建っていた。
杯はここから流れて来たにちがいないと与茂吉は思った。
すると、屋敷の中から「はい、そうです。よく届けて下さいました。」と娘の声がして、与茂吉は美しい娘に屋敷の中に招かれた。

娘は与茂吉に言う。「与茂吉さま、私のお婿さんになって下さいまし。そして、ここで末永く幸せに暮らしましょう。」

気が付くと、与茂吉は娘に抱えられて屋敷の中を飛んでいた。屋敷の中には、春の間、夏の間、秋の間、冬の間があり、四季折々の自然の美しさが味わえるのだった。
与茂吉は夢のような生活をこの屋敷で送った。そうして、瞬く間に3年の月日がたった。

ある日、与茂吉が娘の膝枕で寝ていると、娘は涙を流していた。与茂吉がその訳を聞くと娘は言う。「与茂吉さん、お別れです。」
与茂吉は慌てて娘に理由を問いただす。
すると娘は、「生きている者にはそれぞれ寿命があります。楽しい3年間でした。」と言い残して消えてしまった。

与茂吉が呆然としていると、「与茂吉、与茂吉、そんな所で座り込んで何しとるだ?」と太一の呼ぶ声がする。与茂吉は水を汲みに行った沢のふちに座っていたのだ。
「オラの嫁さまが、オラの嫁さまが消えてしもうた。」
「おい、何寝ぼけたこと言っとるんじゃ?しっかりせい!!」と言って太一は与茂吉の肩をゆする。そこで与茂吉は、太一に今までの一部始終を話して聞かせた。
ところが、太一が言うには3年どころか、与茂吉が沢に水を汲みに行ってからまだ一時(いっとき)しか経っていないというのだ。

太一が与茂吉を仕事場に連れて帰ろうとした時、一匹のぶよが蜘蛛の巣にかかっているのが目に留まった。与茂吉がそのぶよを見ると、なんと、ぶよは与茂吉が一緒に暮らしたあの娘の姿に見えたのだった。
「オラの嫁さまはぶよじゃった!!」

ぶよに魅せられて、一時の間にぶよの3年を生きたという、なんとも不思議な話だった。

(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-8-20 9:18 )


ナレーション常田富士男
出典佐々木徳夫(未来社刊)より
出典詳細むがす、むがす、あっとごぬ(日本の昔話13),佐々木徳夫,未来社,1969年06月30日,原題「ブヨのえっとじ」,採録地「仙台市宮城野」,話者「佐藤貞枝」
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このページを印刷
追加情報
このお話の評価8.0000 8.00 (投票数 5) ⇒投票する
※掲載情報は 2011/8/20 14:50 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
お話の移動 ( 30  件):   <前  1 ..  15  16  17  18  19  20  21  .. 30  次>  
コメント一覧
2件表示 (全2件)
猫  投稿日時 2021/9/1 7:40
どこか切ないお話でしたが、とても面白かったです。いくら虫一匹であっても簡単に命を奪ってはいけないと改めて感じました。虫一匹殺しただけでも地獄に落とされるといいますが、この話を見て納得しました。
ゲスト  投稿日時 2012/6/2 13:34
虫の命は儚いもんだっちゃね・・・。
投稿ツリー
2件表示 (全2件)
現地関連情報
出典本調査 facebook
Twitter

オンライン状況

46 人のユーザが現在オンラインです。 (37 人のユーザが お話データベース を参照しています。)

新着コメント(コメント24件)