投稿者:Perenna 投稿日時 2021/8/19 1:51
アニメではハッピーエンドで終わっていますが、この話には後日談があります。
「日本の伝説30・静岡の伝説」(角川書店)には、次のように書かれています。
「天城の故里に帰ったのは四十をすぎてからだという。あるとき、山で仕事をしていると、わきで同じように巨木を挽いている木挽がいた。その若者は、善六の盛りのころのように、段違いの技のもち主だった。善六が30センチ挽けば45センチ挽いた。善六が180センチ挽けば、若者は汗も出さずに270センチ挽きわった。負けてたまるかと、善六は力のかぎり挽きつづけたが、ついに若者におよばなかった。これは浅間さんが、みきりどきを教えているのにちがいないと悟って、その日を最後に山を降り、余生を浅間さんに奉仕して終わったと伝えている。」
善六が参籠した雲見浅間神社の祭神は、石長姫という女神です。
石長姫は下田富士の祭神でもあり、妹の富士山の神様でもある木花咲耶姫よりも容貌が醜いことで悩んでいて、伊豆に引き籠ってしまったという、かなりナイーヴで内気な女神さまらしいです。
善六は江戸に出て、美しい波模様を描くような木を挽いていたそうですが、それがかえって女神さまの気に障ってしまったのでしょうか?
それとも、女神さまは素朴な善六のことを内心憎からず思っていて、最後には自分の手元に置いて奉仕させたいと望んでいたのかもしれません。
この昔話はなんとなく、善六の努力の話というよりは、女神さまの恣意的で気まぐれな気持ちが大きく左右しているような感じがしたりもしますね。
アニメで描かれている善六も太っていて醜男(ぶおとこ)ですし、不器用ですが生真面目なところが、女神さまの気に入ったのかもしれませんね(笑)