Re: 地獄の人参

地獄の人参 についてのコメント&レビュー投稿
昔、悪たれ婆さんが死に、生きている間にあくどく貯めた金を握りしめて、地獄に落ちた。 婆さんは、全てのお金をえんま大王に差し出し、極楽に行かせてもらえるように頼んだ。する...…全文を見る

Re: 地獄の人参

投稿者:yassan 投稿日時 2019/3/8 12:25
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Perenna様

調べてみると、どうもこの話は欧米キリスト教圏に広く分布しているようです。おそらく「蜘蛛の糸」や「地獄の人参」はこれらヨーロッパの話の日本式翻案なのでしょう。なお欧州の場合、話中の意地悪婆さんは聖ペテロの母親とされることが多いようです。なぜ12弟子の一人、ペテロの母親がこうも意地悪だったかは知りませんが・・・

スウェーデンの女流作家、セルマ・ラーゲルレーヴの『キリスト伝説集 』(※1)にも「わが主とペトロ聖者」として書かれています。この場合、人参やネギは登場せず、天使にかかえられて地獄から脱出するようです。

またシチリアの民俗学者ジュゼッペ・ピトレも似た話を伝えており、著作の中でこの話の原型について触れています。(※2) 興味深いので引用します。以下” The Collected Sicilian Folk and Fairy Tales of Giuseppe Pitrè” (邦訳なし) p895 からの拙訳です。

「ドイツの民俗学者ラインホルト・コーラー(Reinhold Köhler)がピトレに伝えた話では、これと似た話は15世紀のドイツにあり、フランツ・ヨーゼフ・モーネ(Franz Josef Mone)の” Anzeiger für Kunde der deutschen Vorzeit” (1836)にあるという。それによれば、

生前に勤勉で悪い事をしなかった木こりの男がいた。しかし聖ペテロはどういう訳か、この哀れな男を天国に入れなかった。そこで木こりは、聖ペテロに天国に上げてくれるよう懇願した。すると聖ペテロは、木こりの持っている斧(おの)を使って天国に上げると言う。

木こりは斧の柄(え)につかまって、地獄から引き上げられる。ところが、木こりがもう少しで天国に着くというところで斧の柄がすっぽ抜けてしまい、木こりはまた地獄に落ちていってしまった。」
__________
※1『キリスト伝説集』、セルマ・ラーゲルレーヴ、岩波書店、1984年8月、p164-176.
※2 Zipes, Jack David. "The Collected Sicilian Folk and Fairy Tales of Giuseppe Pitrè". New York: Routledge, 2009. 501,895. Print.

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