唄い骸骨 日本 鹿児島県
昔、二人の商人が連れ立って出稼ぎに出かけ、一人は沢山 銭をもうけたが、もう一人は少しももうけないで帰途についた。途中、《よけいのをばね》の頂上に五葉の松があって、そこで二人で休んで話をしていたが、もうけなかった方の男がもうけた男の首を切って金を奪い、そのまま家に帰った。
男は三年間商いをせずに遊んで暮し、三年後にまた同じ道を通って出稼ぎに出かけた。すると、五葉の松の辺りの藪の中から、
叶かのた 叶たよ 思たこと叶た
末じゃ鶴亀 五葉の松
と、とてもいい歌声がする。見に行くと、されこうべが唄っているのだった。男はこの骨を拾って金持ちの家に行った。
「私は歌うされこうべを持っております。もし歌わなかったら私の首を差し上げます」
「されこうべが歌うなどということがあるものか。よし、歌ったら私の全財産をやろう」
そこで男はされこうべに歌わせようとしたが、転がしても叩いてもいっこうに歌わない。それで、金持ちに首を切られてしまった。途端に、されこうべがカタカタと歯を鳴らして歌った。
叶た 叶たよ 思たこと叶た
末じゃ鶴亀 五葉の松
金持ちは嘆いたが、どうしようもない。されこうべが三年前の仇をとったという話である。
参考文献 『日本昔話集成(全六巻)』 関敬吾著 角川書店 1950-
http://suwa3.web.fc2.com/enkan/minwa/tori/03.html↑この頁には、下記の文献も載っています。
歌う骨 ドイツ 『グリム童話』(KHM28)
唄う骨 ハイチ