おくびょうな勇士のあらすじ(今昔物語の本より)

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おくびょうな勇士のあらすじ(今昔物語の本より)

投稿者:マルコ 投稿日時 2013/7/29 22:39
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今昔物語『兵だつる者、我が影を怖るること』というお話が類似しています!!

今は昔、ある受領の郎等で、人に勇猛の士と思われようとして、やたら勇者ぶった振る舞いをする男があった。(ある日)朝早く家を出て、どこかへ行くつもりでいたので、男がまだ寝ているうちから、妻は起き出して食事の用意をしようとしていると、有明の月の光が板間を漏れて家の中に差し込んできた。その月の光で、妻は自分の影が壁に映ったのを見て、童髪を振り乱した大男の盗人が物取りに押し入ったと早合点し、あわてふためいて、夫の寝ているところに逃げていき、夫の耳に口をつけて、ひそかに、
「あそこに大きなぼさぼさの童髪の盗人が物取りに入って立っていますよ」
と囁いた。聞いて夫は、
「そやつのそっ首、打ちおとしてくれる」
と跳ね起きるや、髻(もとどり)も丸出しの裸のまま、太刀を持って出ていったが、その自分の影がまた、壁に映ったのを見て、
「なんと、童髪のやつではなく、太刀を抜いた者ではないか」
と思い、
「これでは俺の頭が打ち割られるやもしれぬ」
とおじけづき、それほどの大声でなく、
「おう」
と叫んで妻のいる所に舞い戻り、妻に、
「そなたは名うのての武士の妻とばかり思っていたが、えらく見誤ったものだ。何が童髪の盗人だ。髻を出して太刀を抜き持った男じゃないか。あやつはえらい臆病者だぞ。おれが出てきたのを見て、持った太刀を落とさんばかり震えおったわ」
と言う。これは自分の震えている影が映ったのを見て言ったのであろう。さて、妻に、
「そなた行って、あいつを追い出せ、俺を見て震えていたのは恐ろしかったからだろう。俺はこれから用足しに出かける門出の際だから、ちょっとした手傷でも負うてはつまらぬ。女はよもや切るまい」
と言って、夜着をひっかぶって寝てしまった。 妻は、
「なんてだらしがない。こんなざまで、よくも夜の見回りなんかできること。せいぜい弓矢を持って月見に行くのが関の山でしょう」
と言い、起き上がってもう一度様子を見に出ていこうとした途端、夫のそばの障子が不意に倒れ、夫に倒れかかった。夫は、さてはあの盗人が襲いかかった、と思い、大声で悲鳴をあげた。妻は腹が立つやらおかしいやらで、
「もし、あなた。盗人はもう出ていきましたよ。あなたの上には障子が倒れかかったのよ」
と言ったので、夫は起き上がって見ると、なるほど盗人はいない。ただ、障子が倒れかかったのだと分かると、やおら起き上がって、裸の胸をたたき手に唾をつけて、
「あいつめ、実際、俺の家に入って簡単に物をとっていけるわけがない。あの盗っとめ、障子を踏み倒すだけで逃げていきおった。もう少しいたら、きっと引っ捕えてやったろうに。お前の手抜かりで、あの盗っとを逃がしてしまったのだぞ」
と言ったので、妻はおかしくなり、大笑いして終わった。 世間には、こんな馬鹿者もいるのだ。まことに妻が言ったように、あれほど臆病で、なんのために、刀や弓矢を携えて人を警固する武者の役を務めるのか。この話を聞く人は、皆この男をあざけり笑った。これは、妻が人に語ったのを聞き伝えて、こう語り伝えているということだ。
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