海彦と山彦

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昔々の大昔、海で魚などをとってくらす兄の海彦と、山で獣をとってくらす弟の山彦という兄弟がおりました。ある日、どうしたことか弟の山彦が浜辺でしょんぼりとしています。 見か...…全文を見る

海彦と山彦

投稿者:マルコ 投稿日時 2013/2/2 9:12
火が照り輝く時に生まれたホデリノミコトは海で漁をして暮らしていたので「海幸彦(うみさちひこ)」と呼ばれるようになりました。火が弱まったきた時に生まれた弟のホオリノミコトは山で狩りをして暮らしていたので「山幸彦(やまさちひこ)」呼ばれました。
 ある日のこと,弟のホオリノミコトは兄のホデリノミコトには互いに釣り竿と弓矢を取り替えてみようと提案しました。そして,兄は山へ,弟は海へ出かけました。しかし,二人とも獲物をとることはできませんでした。そこで兄は弟に「やはり本来持つべき物を持って,本来の場所へ出かけないと何も得られないから,道具を返すことにしよう。」と言いました。ところが,弟は魚がとれないばかりか,兄の大切な金の釣り針を海でなくしてしまっていたのです。それを聞いた兄は激怒してしまい,とにかく返せと責めてきました。そこで,弟は自分の剣(十拳剣:とつかのつるぎと言われる剣)をこわして500本の釣り針を作り,それを持って行って償おうとしましたが,「あの釣り針が欲しい!!こんなものはいらん!!」と言って許してはくれませんでした。次に1000本作って持って行っても「元の針でなければだめだ。」と言われて困ってしまいました。

 どんなに探しても元の針を見つけることはできません。困り果てて泣きながら海岸にたたずんでいると,潮路の神で塩椎神(シオツチノカミ)という老人と出会いました。山幸彦がわけを話すと,老人は竹で編んだ籠(かご)を作って小舟としました。そして,「この船に乗って海の国へ行きなさい。」と言いました。「私が小舟を押し流したらそのまま進みなさい。そのうちよい潮にぶつかるので,その流れに乗れば魚の鱗(うろこ)のように並ぶ宮が見えてきます。そこは綿津見の神(ワタツミノカミ:海神)の宮殿ですから,門まで行ったら,傍(かたわ)らにある泉のほとりの桂(かつら)の木がありますから,その木の上で待っていなさい。ワタツミノカミの娘があなたを見つけて取りはからってくれるでしょう。」ホオリノミコトはその老人に言われるまま海に出ていきました。
 海神の国に着くと,ホオリノミコトは海神の家の前にある大きな木の上に登りました。そこへ,海神の娘,豊玉比売(トヨタマヒメ)の侍女がやってきて,木の上のホオリノミコトを見つけました。ミコトが「水がほしい。」と言うと,侍女は持っていた器に水を入れて差し出したのですが,ミコトはそれを飲むことなく,首にかけていた玉をとり,口に含んでから器の中に吐き出しました。すると,この玉は器にくっついたままとれなくなり,侍女はこれをトヨタマヒメに差し出しました。その玉を見たトヨタマヒメは門の外に誰かいるのかと尋ねると,侍女はありのままを報告しました。トヨタマヒメは自分の目で確かめようと門の外へ出ると,素晴らしい容姿のホオリノミコトに一目惚(ひとめぼ)れしてしまいました。宮殿に戻ったトヨタマヒメはそのことを父のワタツミノカミに報告しました。ワタツミノカミはホオリノミコトが神の子とわかり,宮殿に招き入れました。そして,アシカの皮と絹で出来た敷物を何枚も重ねて座を作り,そこにホオリノミコトを座らせると,たくさんのごちそうやきれいな踊りで歓待しました。しばらくして,ホオリノミコトはトヨタマヒメと結婚し,海の神の家で暮らしました。

それから3年の月日が経ちました。ホオリノミコトは時々ため息をついていました。トヨタマヒメがそれを見て尋ねました。「もしかして,あなたは家に帰りたいのではありませんか。」ホオリノミコトは自分の気持ちを語りました。トヨタマヒメは父にホオリノミコトの思いを話しました。ヒメから話を聞いたワタツミノカミは「なくしたお兄さんの針を見つけてあげましょう。」と言って海の中の全部の魚を集めることにしました。すると,「鯛が『口が痛い』と言ってここに来ていません。」と魚たちが言いました。そこで鯛をよんでのどの奥を見てみると,釣り針が引っかかっていました。ワタツミノカミはこれを取り出し,清めてホオリノミコトに渡しました。その時,「この釣り針をお兄さんに返す時,『この釣り針は,おぼ針,すす針,貧針,うる針』と唱えながら返しなさい。そして,後ろ手に渡すのです。もし,お兄さんが高いところに田を作ったら,あなたは低いところに,もしお兄さんが低いところに作ったなら,あなたは高いところに田を作りなさい。水をつかさどっているのは私ですから,お兄さんは3年は貧しくなりましょう。もしそのことでお兄さんがあなたを恨んで攻めてきたら,この塩盈玉(しおみつたま)でおぼれさせ,もし『許してほしい』と言ってきたら今度は塩乾玉(しおふるたま)を出して助けてあげなさい。お兄さんを懲(こ)らしめるのです。」と言って2つの玉を渡しました。帰る時,ホオリノミコトは一番早いサメに乗って1日で元の海岸にたどり着きました。サメに礼としてひも付きの小刀を首にかけてやりました。

ホオリノミコトは兄に釣り針を返す時,ワタツミノカミに言われたとおりにしました。すると,兄はだんだん貧しくなり,そのことで弟を恨むようになりました。そして,とうとう弟に攻め込みました。弟は2つの玉で兄を繰り返し苦しめました。すると,降参した兄は弟に謝りました。兄は弟に「これから先はあなたの警護の役を勤めましょう。」と誓いました。これ故,兄のホデリノミコトを先祖とする隼人族は今は朝廷の守護をしているのです。

<マルコの持っている「日本の神話」という本より引用>
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