Re: 越後の兄弟
投稿者:Perenna 投稿日時 2021/10/30 22:31
この昔話は、「日本の伝説41・越後の伝説」にも紹介されています。
「長岡から二つ目の押切駅で下車、徒歩七分ぐらいのところに筒場という部落があり、ここに筒場の長者という伝説がある。
昔、筒場に二人の兄弟があった。兄は出稼ぎに出たまま行方不明となり、弟は江戸へ出て一生懸命に働き、たくさんの金をためた。そのうち弟は郷里に帰って家を再興しようと、ためた50両を持って江戸を出た。上州と越後の境まで来ると、日が暮れてしまった。そのとき目の前に人家の明かりが見えたので訪ね、一夜の宿を頼んだ。ところが、この家は山賊の住家だった。このため脅かされて金を巻き上げられたが、狼に襲われたときの用心にと束ねてあった刀の山から、一本もらって出た。彼は金をなくしたので郷里へは帰らず、再び江戸へ出た。元の主人を訪ね刀を見せたところ、非常な名刀であることがわかり、すぐ100両に売れた。そこで彼はこれを持って、再び越後へ向かった。途中、山賊の家へ立ち寄り、刀の話をし、前にとられた50両を、「これはお前の金だ」といって出した。この正直さに驚いた山賊は、彼の名前を尋ねたことから、二人は子供のころ別れた兄弟だとわかり、思いがけぬ巡り合いを喜んだ。そしていっしょに郷里に帰り、100両で田畑を求め一生懸命働いたので、筒場の長者といわれるほどの大金持ちになったという。」
筒場というのは現在の地名では、長岡市新組町字筒場らしいです。