昔むかし、田んぼでは稲が植えられ、お百姓さんからあれこれ手をかけてもらって、大切に大切に育てられていました。そんな稲の育つ田んぼの脇っちょに、大豆とソバと小豆がいました。
ある時、ソバが「俺は稲ほど手がかからない、どんなに痩せた土地でも育つ!」と自分の良さをアピールしました。大豆は「わしだって場所は選ばないし、手もかからない」と主張し、やがて言い合いになりました。
両者の間に挟まって小さくなっていた小豆が「どっちが偉いか、里まで見に行ってはどうだろう」と提案しました。3人が里の民家の台所を見学していると、味噌樽を見つけました。
大豆は「味噌の元になっているのは大豆だし、醤油や豆腐の元になっているのも大豆だ」と言いました。ソバは「おまんまの代わりになるのは、ソバ団子やそば切りや蕎麦だ」と言い返しました。とうとう大豆とソバは喧嘩をはじめてしまい、言い合いでは済まなくなった大豆が怒りに任せてソバをガツンと殴りつけました。
殴られたソバは、角を一つ欠いてしまい三つの角になってしまいました。大豆は怒りのあまり、ねっとりと油っぽい汗をかくようになりました。気の小さい小豆は、真っ赤になってぶっ倒れてしまいました。大豆の様子に驚いたソバは、そのまま山の高い所へ逃げていきました。
それからというもの、大豆は脂っこくなり、ソバは三角形になって山の荒れ地でも育つようになり、小豆は赤い実となりめでたいお赤飯にも入るようになりました。そして、大豆もソバも小豆もそれぞれ人の役に立っているうちに、今では喧嘩したことも忘れてしまったそうです。
(紅子 2013-8-10 3:19)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 小倉学「白山山麓白峰の民話」より |
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