昔ある所に寺があり、和尚と小僧が住んでいた。
ある夜2人が夜のおつとめをしていると、突然大入道が入って来て和尚さんに「両足八足大足ニ足これいかに」と問答をしかけた。和尚さんが答えられずにいると大入道は和尚さんの首を切って殺してしまった。小僧は恐ろしくて逃げ出し、村の名主の家まで逃げてきた。
首を切られた和尚さんの弔いをすませた村人は、都から偉い坊さまを呼び、化け物を退治してくれるよう頼んだ。しかし、また大入道が現れて都の坊さまに問答をしかけた。だが坊さまは 答えられず、大入道に首を切られて死んでしまった。
その後幾人かの坊さまが寺に住んだが、皆その夜の内に首を切られて死んでしまった。こうしてこの寺は化け物が出ると言われ、誰も寄り付かなくなってしまった。
そんなある夜、一人の旅の雲水が名主の家に泊まり、この化け物の話を聞いた。そして小僧が逃げる時入道が横走りに追い掛けて来たことを聞くと「わかりました、私のお任せ下さい」と言って、その夜寺に泊まった。
そして夜遅く、あの大入道がまた寺にやって来て問答をしかけた。「横這い自在やいかに」と聞くと雲水は「泡を吹いては子だくさん」と答えた。すると大入道は驚いて「両目天をさすとはいかに」と聞いた。雲水は「湯につかれば赤くなる」と答えた。
大入道は怒った顔をして「両足発足大足ニ足これいかに」と聞いた。雲水は少し考えて「水の潜れば地にも這う」と答えた。そして「汝に問え!たわけ者め!」と言い「喝!」と声をかけた。すると大入道はたちまち大きなカニに変わり、はさみを振り上げて雲水に襲い掛かった。
雲水はカニのはさみをかわし、持って来た斧を振り下ろした。大カニはすごい声をあげてどこかへ逃げていった。翌朝、村人と名主が寺にやって来て、雲水は訳を聞いた。雲水と村人が血の後を辿っていくと、川べりに大きな洞穴が空いており、そこに大きなカニが死んでいた。雲水と村人はその穴を埋めカニの弔いをした。
そして雲水はまた旅に出て、やがて修行を積んで帰り、この寺の住職となった。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 山梨のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 山梨のむかし話(各県のむかし話),山梨国語教育研究会,日本標準,1975年06月10日,原題「両足八足大足二足」 |
備考 | 舞台は蟹沢村の長源寺、寺の近くの坂を「蟹追い坂」というそうです。 |
現地・関連 | お話に関する現地関連情報はこちら |
場所について | 長源寺(山梨県山梨市万力) |
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