岩国(周防の国)の関戸村のいやずけ谷で、一人の猟師が獲物を探していた。雨も降っていたので、鳥屋(とや、小屋のこと)の中で、じっと獲物が現れるのを待っていた。
鳥屋の中からふと外を見ると、ミミズがガマガエルから食べられるところだった。ちょっとミミズが哀れだな、と思っている間に、白蛇がそのガマガエルを飲み込んでしまった。猟師は血の気が引く思いだったが、突然キジが現れ白蛇を襲った。次々と起こる出来事に驚いたが、せっかくの獲物を仕留めようとキジに鉄砲を向けた。
すると今度は、キジを狙ってヤマネコが飛び込んできた。猟師に背を向け、キジを食べ始めたヤマネコに鉄砲を向けたが、なんと今度は大きな熊がやってきた。熊はヤマネコを一撃で倒し、ヤマネコをくわえてやぶの方へ歩いて行った。
猟師はそっと熊のあとを追いかけ、木陰から様子をうかがった。ちょうど、二匹の子熊がヤマネコを食べているところだった。猟師は、「こんないいチャンスはまたとない」と思い、鉄砲で狙いを定めた。
猟師は、これまで起こった事を思い浮かべた。自分が子グマを撃てば、今度は自分が母グマに襲われるような錯覚に陥り、驚いてその場から逃げ出した。そして思案した猟師は「もう生き物を殺す仕事はやめよう」と決心し、谷底に鉄砲を捨てた。それ以来、この谷のことを「よいしあん谷」と呼ぶようになった。
(紅子 2011-9-14 1:38)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 山口県 |
DVD情報 | DVD-BOX第7集(DVD第35巻) |
場所について | 山口県岩国市関戸(地図は適当) |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第104巻(発刊日:1980年かも) |
講談社の300より | 書籍によると「山口県のお話」 |
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