昔あるところに、村人みんなが働き者の豊かな村がありました。村には、勘助という一人の若者がいて、昼は野良仕事に精を出し、夜は木彫りの仏像を作っていました。
ある秋の夕暮れ、勘助は、疲れ果てて倒れてしまった旅の女「みよ」に出会いました。勘助が親切に介抱してあげたので、みよは春になる頃にはすっかり体調も良くなりました。
しかし、みよは勘助の家を出ていく様子もなく、仕事もしないで一日中ごろごろと布団の中で過ごしていました。みよは都暮らしだったため、畑仕事などは全くできない女でした。その代わり、野に咲く赤い実の汁を唇に塗り、水を入れた桶に映る自分の顔を確かめながら綺麗にお化粧をしました。
勘助は、仕事をしないみよに「そろそろ出ていってくれ」と言うと、どこにも行くあてのないみよは「どうか自分を嫁にしてくれるように」と必死に訴えました。哀れに思った勘助は、しぶしぶみよを嫁にもらう事にしました。みよは、仕事以外では細かく勘助に尽くしたので、勘助も次第にみよの事が好きになっていきました。
その年の秋、村にネズミの大群が押し寄せ、村の田畑を食い荒らしました。働き者の村人たちは「きっとお洒落な怠け者が村に来たせいだ」と、みよのせいにしました。それを知ったみよは、勘助の彫った仏像に手を合わせ「どうが私が役に立つ事ができるようにしてください」とお祈りしました。
すると、みよは真っ白な猫になり、村中のネズミ達を一匹残らず退治してしまいました。勘助は、突然いなくなったみよを探しましたが、もしかして白猫がみよの身代わりではないかと思うようになりました。そして、みよを懐かしんで、自分が彫った仏像に紅をさすようになりました。
(紅子 2012-5-25 0:48)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 辻田三樹恵(晴文社刊)より |
出典詳細 | 風の長者さま,辻田三樹恵,晴文社,1978年12月24日,原題「やさしい嫁さん」 |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第040巻(発刊日:1981年3月) |
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