昔、沖縄の首里という所に、とても美しいつる子という娘と母親が住んでいました。
連日、つる子を嫁に欲しいと縁談が持ち掛けれて困った母親は、首里城近くの園比屋武御嶽(そのひゃんうたき)に、お参りしました。この事を知った近くの豪農のうすのろ息子の多良(たらー)は、悪知恵をめぐらしました。
多良は神殿の物陰に隠れて「ワシは神である。今日帰り道に一番に出合った男とつる子を結婚させろ」と言いました。母親は神様のお告げと信じて感激しながら、帰り道を歩いていると、出会ったのは多良でした。
母親はショックで寝込んでしまいましたが、つる子は「神のお告げなら仕方がありません」と、多良のところへ嫁に行くことにしました。
結婚式の当日、つる子は月夜の晩に迎えのカゴに乗って出発しました。カゴを担いでいた男たちが、酒に酔って道中すっかり寝込んでいる途中、たまたま秋のお月様見物から首里城へ戻る若い王様と出会いました。
若い王様は、つる子の代わりに黒い子牛をカゴに入れて、つる子をお城へ連れて行きました。やがて目をさましたカゴの男たちは、子牛のカゴを担いで、夜明け頃に多良の家に到着しました。
多良はカゴの中に子牛が入っていたので、大変に腹を立てて、つる子の母親に子牛を突き返しました。何も知らない母親は、つる子が本当に子牛になってしまったと思い込み、子牛を大切にかわいがりました。
やがて三月になり、首里城では御前舞踊(ごぜんぶよう)が開催されて、母親も子牛を連れて見物に行きました。すると、役人が母親のところへやってきて、奥御殿へ連れて行きました。何とそこには、美しく着飾り王妃になったつる子がいました。
母親は、つる子からこれまでの出来事を聞いて「神様は、本当に良いお婿さんを選んでくれたんだねえ」と涙を流して喜びました。そして母親も首里城に住むようになり、いつまでも幸せに暮らしたそうです。
(紅子 2013-11-2 4:47)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 伊波南哲(未来社刊)より |
出典詳細 | 沖縄の民話(日本の民話11),伊波南哲,未来社,1958年08月15日,原題「小牛になった花嫁」,採集者「喜納緑村」 |
場所について | 園比屋武御嶽石門(首里城公園内) |
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