二人の絵描きが、江戸に向かって旅をしている途中で、あまりきれいではない宿に泊まる事になった。
部屋で休んでいると、他の旅人と相部屋を頼まれ、狭い部屋に旅の商人も泊まることになった。「わしらは、江戸ではちょっとは名の知れた絵描きじゃ」と偉そうに振る舞う二人の絵描きに、商人は名前をたずねた。一人は、葛飾一切(かつしかいっさい)もう一人は葛飾合切(かつしかがっさい)と言う名だった。
商人は、聞いたことも無い名前に二人がホラを吹いていると思い「実はわしも絵描きだ」とウソぶいた。それを聞いた二人の絵描きは、「ならば絵を描いて対決しよう」と言いだした。
最初は、葛飾一切が「母親が赤ん坊に飯を与えている絵」を描いてみせた。しかし、それを見た商人は「母親が、あ~んと言うのに口が開いていない」と言って、葛飾一切を黙らせた。
次に、葛飾合切が「大工が大きな木を鋸で切っている絵」を描いた。またまた商人は「これだけ大きな木を切っているのに木屑が出ていない」と言って、葛飾合切も黙らせた。
最後に、商人が絵を描く番となった。商人は、紙を真っ黒に墨で塗りつぶして「これは暗闇から黒い牛が出てきた絵じゃ」と言った。しかし、一か所だけ米粒ぐらい塗れていな所があり、それを見つけた葛飾合切が目ざとく指摘した。
しかし商人は平然と「この白い点は、牛についた飯粒じゃ」と答えた。二人の絵描きは「参りました」と頭を下げた。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-10-27 23:09 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 埼玉県 |
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