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No.1296
がんぶちのばけがに
蟹淵の化け蟹
高ヒット
放送回:0819-B  放送日:1991年11月02日(平成03年11月02日)
演出:芝山努  文芸:沖島勲  美術:亀谷三良  作画:佐野哲郎
石川県 ) 28421hit
あらすじ

昔、能登の鍋谷川の川上に鍋谷(なべたに)と和気(わけ)という村があった。上流の鍋谷に比べて下流の和気の方は昔から干ばつに悩まされ続けており、雨が三日も降らないと土地が割れる有様で、雨で蓑傘が腐るぐらい降らないと米が採れなかった。

ある年の夏、和気で雨が六日も降らないという事が起こった。村人たちは早速上流から一里ほど上った蟹淵(がんぶち)へ雨乞いに出かけ、いつものように枯れ枝を集め大きな焚火をこしらえると、昔からの習わし通りに一斗樽の酒を淵の中へ投げ入れた。しかし一向に雨の降る気配は無く、堪りかねた和気の村長は淵をせき止めている水戸口を開くよう指示する。本来蟹淵の水は一ヶ村の村だけで勝手に開く事は固く禁じられていたが、村人達はそれでも仕方がないと思い、村の若者達の手で水戸口が開かれ、淵の水は勢いよく鍋谷川へ流れてしまう。

淵の水は見る見るうちに減っていったが、突然、この淵の主である大蟹が這い出きて村人達に襲いかかってきた。その時、一人の勇敢な男が大蟹に向かって持っていた鍬を力一杯振り回すと、鍬は見事大蟹の脚に食い込み、身体の自由を失った大蟹は淵の中へ姿を消していった。間もなく雷と同時に天の底が抜けたかのような大雨が降り、淵はまた水かさを増していきながら渦を巻く勢いで荒れに荒れた。淵の主の祟りを恐れた村人達は急いで水戸口を閉め、逃げるように淵を後にしたが、大蟹を退けた男の後ろにいた村人は、大蟹が消え去る時に「上流の鍋谷村がなければ下流の和気村を押し流してやるものを」という恨みの言葉を確かに聞いたと男に話した。

夏が終わり、豊作となった和気の村で秋の採りいれが済むと、男は山の温泉へ湯治に出かけた。大蟹の残した言葉がどうしても気になっていた男は、偶然そこで足に大きな切り傷のある屈強な侍に出会う。どうやら侍は以前鍬に不覚を取ってしまい、その傷を癒すためこうして湯治に来ているのだという。男は、もしや大蟹が侍に化けているのではと疑うが、まさかそんな事は無いと思い直し侍を酒に誘うと、侍は「三度の飯より酒が好きだ」というので、その夜二人は遅くまで酒を酌み交わした。

次の日の朝、二人は連れ立って鍋谷と和気を目指して山を降りた。ところが後から付いてきたはずの侍が、男の家に着く頃になって忽然と姿を消してしまう。その晩、男はどうにも合点がいかないまま夕飯を済ませると鍋谷の炭売りが家に入ってきたので、男は炭を一俵買ってやる代わりに湯治場の不思議な侍の話を炭売りに聞かせた。すると炭売りも先程その侍に会ったのだという。炭売りが言うには、鍋谷川を下りる途中で夕刻に山へ登る怪しい侍を見かけたので声をかけてみると、侍は炭売りをぎろりと睨みつけ腰の刀を抜くや否や、「自分は千年も大昔から住んでいるこの川上の淵の主だ」と吐き捨て、まるで蟹の横這いのような足取りで淵の方へ登っていったという。

これを聞いた男は、やっぱりあの時の大蟹に違いないと確信し、炭売りに蟹淵の雨乞いの事を全て話した。その話を聞いた炭売りは納得し、この事があってから化け蟹の噂は鍋谷川の四方に広まった。とりわけ和気の村人達の慄きときたら相当な物で、あの大蟹の恐ろしい文句が頭にこびり付いていたため一方ではなかった。その後和気の村人達は、雨乞いをする時には決して鋤や鍬を淵に持っていく事はしなくなり、水戸口にも決して手を触れなかった。そして、鍋谷村の分も合わせて酒樽を二つ淵に投げ込んだという。

(投稿者: お伽切草 投稿日時 2012-1-5 1:49 )


参考URL(1)
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/4065/ganbuti.htm
参考URL(2)
http://www.city.nomi.ishikawa.jp/museum/ganbuchi.html
ナレーション市原悦子
出典清酒時男(未来社刊)より
出典詳細加賀・能登の民話 第一集(日本の民話21),清酒時男,未来社,1959年08月31日,原題「蟹淵の化け蟹」,国府村史より
場所について能登の蟹淵
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※掲載情報は 2012/1/5 2:41 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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