昔、岡山県の遥照山(ようしょうざん)に鬼が住んでおりました。
ある時、鬼は普段は山を通らない村人達が来て、何やらしきりに困っている様子を目にします。どうやら、村人達は隣村に行くのに使っていた加賀池のそばの道に、大岩が落ちてきて道を塞がれて困っているようでした。
実は大岩を加賀池のそばの道に落としてしまったのは、この赤鬼だったのです。一昨日の晩に腹を減らした赤鬼は加賀池で釣りをするのに大岩を投げたところ、池まで届かずに道に落としてしまいました。
鬼は、自分のしたことで村人が困っているのが可哀想になってきて、岩をどけてやることにしました。その晩、岩のところへ来た鬼は、村人の迷惑にならぬところへと思い、遠くの山に向かって大岩を投げつけました。
すると、なんということか大岩は山に跳ね返って元の位置に戻ってしまいました。鬼は少し唖然としましたが、気を取り直してもう一度山に投げつけましたが、またまた石は戻ってきます。それが繰り返されるうちに、鬼もだんだん意地になってきて、戻ってくる岩を何度も何度も同じ山に投げつけました。
この岩を投げ飛ばす音は、村まで響き渡り、村人たちは一体何が起こっているのかと震え上がりました。そんな事とは知らない鬼は、どうやっても戻ってくる大岩についにブチ切れて最大限の力をだして、山の中腹に思い切り岩をめり込ませました。
そして、大岩との戦いに勝った鬼がふと手をみると、なんと手の皮が破れていました。それをみた鬼は、そんなになってまでムキになった自分が馬鹿馬鹿しくなって帰って行きました。
翌朝、村人達が山へ行くと、遠くの山に大岩がめりこみ、その大岩には大きな手形がついていました。その岩は「加賀池の鬼の手形岩」と名付けられ、その後、岩を見に来る人で村はけっこう賑わったということです。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-8-16 2:04 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岡山のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 岡山のむかし話(各県のむかし話),岡山県小学校国語教育研究会,日本標準,1976年10月01日,原題「鬼の手がた岩」,採録地「浅口金光町」,話者「内田律爾」 |
場所について | 鬼の手形岩(地図は適当) |
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