昔、千葉のある村に古いお寺があり、そこにどうしようもない怠け者のお坊さんが住んでいた。
この坊さん、お勤めもほったらかして、いつも寝てばかり。檀家の者が法事などのお願いをしに来ても、その度に仮病を使っては断ってしまうのだった。
ある日のこと、寺に檀家の総代がやって来た。ここのところ久しく法事を行っていないので、明日法事のお経を上げてもらいたいと頼みに来たのだ。坊さんは必ず法事に行くと約束したが、翌日になってみればやはり法事に来ない。
今日こそは縄をつけてでも坊さんを連れて来て、きちんと法事を執り行ってもらおうと、檀家衆は寺に向った。すると、寺に坊さんの姿はなく、代わりに坊さんのような顔をした牛が一匹いるだけだった。檀家衆は仕方がなく帰っていった。
この牛、実は坊さんが姿を変えたものだったのだ。坊さんは亡くなった者たちへの供養を怠り、寝てばかりいたので仏様の罰が当り、何と牛になってしまったのだ。
牛になった坊さんは、前非を悔い心から仏様に詫びた。すると仏様のお告げが下った。それは、改心の証に経塚を九十九基作ったなら、元の人間の姿に戻すというものだった。経塚とは、経典を土に埋めて、亡くなった者の供養をするための塚である。
さすがの怠け坊主も、この時ばかりは人間に戻るために一所懸命塚を作った。そして、それから何日かして、とうとう九十九の経塚が完成した。経塚が出来ると同時に坊さんは元の人間の姿に戻り、それからというもの見違えるほど坊さんの仕事に勤しんだということだ。
村の衆は、急に坊さんが働き者になったのに驚いたが、何はともあれ一安心と、たいそう喜んだそうだ。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-8-26 14:23)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 千葉の伝説(日本標準刊)より |
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