むかしむかし、北国では雪がまだ本当に白い色ではなかった頃の話です。
ある冬の事、北国の庄屋の家に遠い村から小さな娘っ子が奉公にやってきました。娘っ子は良く働きました。仕事は辛かったが、ご飯はちゃんと食べられるし、故郷の村にいる時よりずうっと楽だと思えるのでした。
そんなある日、その夜の宴会の準備で忙しい奉公人達が遅い昼食を食べていた時のことです。旅の坊様が食べ物を恵んでくれと言ってやってきました。
庄屋のおかみさんは坊様を冷たく追い払いましたが、娘っ子は自分の大切なご飯を握り飯にして、こっそり坊様に渡しました。すると坊様は娘っ子に紅い布と鈴をくれたのでした。
やがて宴会が終わり、後片づけをはじめようとした時、娘っ子は坊様に貰った布を汚れた茶椀の中に落としてしまいました。すると、布が落ちた茶椀だけがピカピカに綺麗になっていました。娘っ子が布を顔にあると、娘っ子の顔がとても美しくなりました。
その話を聞いた庄屋のおかみさんは、娘っ子から布を取りあげ自分の顔を拭きました。すると、おかみさんは皺(しわ)としみだらけの顔になってしまいました。おかみさんはすっかり怒って布と鈴を投げ出し、雪が降りしきる中、娘っ子を家から追い出しました。
娘っ子は自分の村へ帰ろうとしましたが、雪と寒さの中でやがて精根尽き果て、とうとう雪に埋もれるように倒れてしまいました。すると不思議なことに娘っ子の手元の布から、白くなった雪が広がってゆきました。そうして真っ白な雪が娘っ子の上に降り積もっていきました。
北国の雪が本当に白い色になったのは、こんなことがあってからだということです。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2013-9-15 11:21 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | (表記なし) |
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