むかし和歌山に「神通(じんつう)」という村があって、この辺りから「ゆうらくさん」にかけては山が深く、鳥や獣がたくさん住んでいました。
ある日、紀州の殿様がこの山で狩りをして、一晩泊って翌日和歌山に帰ることになりました。翌日、一行が麓まで降りた時、急にあたりが暗くなって生臭い風が吹いてきました。そうして身の丈20mもある大蛇が現れたのです。
大蛇の目当ては狩りの獲物でしたが、驚いた家来たちは一目散に逃げて行き、殿様は馬から落ちて気を失ってしまいました。そうして、気の毒なことに、大蛇が去った後も助けに来る家来はおらず、殿様は一人置いてきぼりをくってしまいました。
そこへ、神通村の樵の甚兵衛(じんべえ)が通りかかり、殿様を家に連れて帰って介抱したのでした。しばらくして、殿様は目を覚ましましたが、大蛇に驚いて馬から落ちて気絶して、家来に見捨てられた等ととても言えず、身分を隠したまま、体が治るまで甚兵衛の家に厄介になることにしました。
何日かして殿様は和歌山に帰ることになり、甚兵衛は馬に殿様を乗せて送っていくことになりました。その時になって初めて、甚兵衛は殿様が殿様であることを知らされ、地面に這いつくばって非礼を詫びました。一方の殿様は、甚兵衛のこれまでの親切に深く感謝して、甚兵衛を連れて城に帰り、大変なおもてなしをしたのでした。
そうして、殿様は甚兵衛に望みの物を何でも与えると言いました。すると、甚兵衛は障子にあいた小さな穴から見えるだけの山を下さいと言うたそうです。殿様はそれを快く承知しましたが、甚兵衛が帰った後、家来が障子の穴を覗いてみると、小指ほどの穴からのぞいた山はとんでもない広さなのでした。家来は大慌てしましたが、もう後の祭りでした。
甚兵衛はその後、村一番の長者となり、障子の穴にちなんで「しょうじ」という性を名乗って一生幸せに暮らしたということです。
(投稿者:ニャコディ 投稿日時 2014/11/23 15:41)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | クレジット不明 |
場所について | 和歌山県の打田の神通が舞台かも(地図は適当) |
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