奈良県のあるところに、大変な金持ちの庄屋さんがいた。広大な敷地内には酒蔵、米蔵、醤油蔵、味噌蔵などがあり、大勢の使用人とともに暮らしていた。
ある日突然、庄屋さんが亡くなってしまった。残ったおっかあと若い一人息子が商売を引き継ぐ事になったが、若息子は朝起きが苦手だったので、もう皆とっくに働き始めてしまった頃にやっと起きだして仕事場の見回りに行っていた。
ある晩の事、おっかあが遅くまで帳簿の整理をしている事に気が付いた。その様子が何やら気になって、若息子はお世話になっている和尚さんに相談した。和尚さんは、「早朝にいる白いすずめを見つけられたら、その心配はなくなるよ」と教えてくれた。そこで若息子は、白いすずめを見つけるために、夜中から蔵の陰でずっと待っていた。
深夜になると、闇に紛れて使用人たちが蔵から出てきた。実は使用人たちが、朝起きが苦手な若息子にはばれないだろうと、勝手に酒や豆や味噌、醤油などあらゆるものを持ち出していたのだった。それに気が付いた若息子は、朝は誰よりも早く起きて仕事場を見て回るようになった。おかげで、以前にもまして商売も繁盛したそうな。
(紅子 2011-7-7 21:05)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 松本俊吉(未来社刊)より |
出典詳細 | 奈良の民話(日本の民話75),松本俊吉,未来社,1980年08月20日,原題「白いスズメ」,採録地「北葛城郡」,話者「松本イエ」 |
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