昔、ある山にごんぎつねという古狐が住んでいました。ある日、ごんぎつねは空を飛ぶトンビを見ながら考えました。「自分もトンビみたいに空を飛んでみたいなぁ」
キツネが空を飛ぶにはお寺のお札が必要なので、さっそく里の寺に行きました。ごんぎつねは小坊主に化けて、お寺で働くことになりました。小坊主は朝から晩までまめまめしく働き、和尚さんが食べたいと思っていた献立を先読みして準備したので、和尚さんは大変関心しました。
そんなある日、夜中にお寺に帰ってきた和尚さんは、囲炉裏(いろり)のそばで疲れて眠る古狐を見つけました。和尚さんは、「小坊主はこの狐の化けた姿だったのか」と思ったが、その晩は何も言わずにそっと寝かしておきました。正体がばれてしまったごんぎつねは、翌朝お寺から立ち去ろうと和尚さんに最後の挨拶をしました。和尚さんは、ごんぎつねの寺に来た目的を知ると、「わしが感心するほどの化けを見せたら、お札をあげよう」と提案しました。
それを聞いたごんぎつねは、お坊さんの行列をやって見せました。行列の最後に、金色の光とともにみすぼらしい衣を着たお坊さんが登場すると、本当のお釈迦さまが登場したように思え、和尚さんはおもわず手を合わせてしまいました。
和尚さんをすっかり化かす事ができたごんぎつねは、和尚さんからもらったお札を首から下げて、嬉しそうに大空を飛んでいきました。
(紅子 2011-10-9 20:18)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 稲田浩二(未来社刊)より |
出典詳細 | 岡山の民話(日本の民話36),稲田浩二,未来社,1964年03月15日,原題「空を飛ぶ狐」,採録地「岡山市内山下」,話者「好並愛」,採集「稲田和子」,再話「稲田和子」 |
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