昔、ある村にお人好しな爺さんがいました。一人身の気楽さから、貧乏でもなく何不自由なく暮らしていました。
この爺さんのお人好しなのをいい事に、村人たちは色々と物を借りに来ました。お物持ちで金持ちの長者ですら、米やら釜やらを借りていくのです。しかも、村人たちや長者は、最初から返す気などなく心の中では爺さんをバカにしていました。
とうとう爺さんの家には何一つ物が無くなってしまいました。大歳(年末)になった頃、仕方なく米を借りに近所へ出かけましたが、今まで散々爺さんの物を借りていた村人たちは、長者が返してもないのにどうして返さないといけないのか?と言って追い返しました。
仕方なく爺さんは長者のところへ行きました。しかし長者は「借りたという証拠でもあるか?」と言って、爺さんを大雪の中に追い出してしまいました。ついに怒った爺さんは、長者がいつも踊っている踊りを真似して踊りました。「人の貧乏はあっちへ押しこーやく、人の福はこっちへ吸いこーやく」爺さんが踊ると、なんと長者の蔵から米俵が次々と空へ飛び出していきました。
この様子に気が付いた長者は、慌てて爺さんに謝り、借りたものを全部返してくれました。さらにこの話を聞いた村人たちも、怖れをなして借りたものを全て返しにやってきました。おかげで爺さんはたいそう良い正月を迎えることができたそうです。
(紅子 2011-12-28 5:06)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 水澤謙一「昔あったてんがな宮内昔話集」より |
出典詳細 | 昔あったてんがな宮内昔話集,水澤謙一(長岡史蹟保存会),三秀社,1956年10月20日,原題「貧乏爺と長者」,話者「横山ソカ」 |
場所について | 長岡市宮内(地図は適当) |
このお話の評価 | ![]() |
⇒ 全スレッド一覧