昔ある所に、ぐうたらな母狐と三匹の子狐がいました。腹がへったと訴える子狐にせかされて、母狐は仕方なく大きな袋を手にして食べ物を探しに出かけました。
山のふもとまで下りてくると、鶏の娘がお裁縫を習いに行く所に出くわしました。母狐に追いかけられた鶏の娘は必死で木の上まで逃げましたが、母狐は木の周りをぐるぐる走り回り、それを見ていた鶏は目を回してしまいました。母狐は、鶏の娘が木から落ちたところを捕まえ、持ってきた大きな袋に詰めました。
母狐は、山奥の家へ帰る途中、いつものぐうたら癖が出てついウトウトと眠り込んでしまいました。寝ている間、鶏の娘さんは裁縫道具からハサミを取り出し、こっそり袋から脱出しました。そして代わりに大きな石を袋に詰めて、切り裂いたところを縫い合わせて、急いで逃げ出しました。
やがて目を覚ました母狐は、大きな石が入った袋を担いで家に帰りました。母狐は、子狐たちに大釜で湯を沸かさせて、袋の中身を熱湯の中にぶちまけました。高い位置から投げ込んだので、勢いよく石が釜に入り、熱湯が狐たちにかかってしまいました。
狐の口の周りは、ヤケドで今でも真っ黒になっています。さて鶏の娘はというと、危険なときにも落ち着いて行動したことを神様からご褒美としてトサカをもらいました。それ以来、鶏の頭には美しいトサカが残るようになったそうです。
(紅子 2013-7-3 23:20)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 桂井和雄「土佐昔話集」より |
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