No.0982
わらびのおん
わらびの恩

放送回:0619-A  放送日:1987年10月10日(昭和62年10月10日)
演出:森川信英  文芸:沖島勲  美術:小出英男  作画:森川信英
岩手県 ) 16557hit
あらすじ

ある山に1匹のマムシが住んでおりました。マムシは「ここいら一帯で俺より強い奴は居ないだろう」と威張っておりました。

ある日、獲物にしてやろうとネズミや蛙を追いかけまわしたのは良いものの、ネズミにも蛙にも逃げられてしまい、くたびれたマムシは原っぱのど真ん中で昼寝を始めました。

すると、マムシの寝ている場所からツバナ(茅の芽)が伸び、マムシの胴体を貫いてどんどん伸びて行きました。マムシが目覚めてみると自分はツバナの先に突き刺さったまま宙ぶらりんになっており、行く事も後ずさる事も出来なくなっておりました。

進退きわまったマムシがぐったりしていると、ツバナの傍から三本マッカ(先端が3つ又に分かれている)のわらびが伸びてきて、マムシの胴体をぐいぐいと持ちあげました。さっきまで追いかけられていたネズミや蛙も「三本マッカのわらび、ぐんぐん伸びろ、どんどん伸びろ」と声をかけてくれました。そうして、とうとうわらびはマムシの身体をツバナの先から押し上げ、マムシは助かる事が出来ました。

以来、マムシはわらびの恩を決して忘れないので、みちのくの各地では山に入る時、

「マムシ、マムシ、萱原で昼寝して、わらびの恩を忘れたか阿毘羅吽欠蘇婆訶(アビラウンケンソワカ)」

と唱えると、マムシが恐れ入って退散するので、マムシに噛まれずに済むと言われております。

(投稿者: 熊猫堂  投稿日時 2012-9-10 10:51)


ナレーション常田富士男
出典岩手県
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追加情報
本の情報講談社テレビ名作えほん第098巻(発刊日:1988年4月)
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※掲載情報は 2012/9/10 12:19 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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Perenna  投稿日時 2019/3/12 22:57
大正4年に出版された「南総の俚俗」では次のように書かれています。(コマ番号60/91)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1870048/60?tocOpened=1

「ある時蝮病みてしの根の上に倒れ伏したれど疲弊せる爲動く能はざりしを地中の蕨(わらび)憐(あわれ)に思ひ柔(やわ)な手もて蛇の体を押し上げて、しの根の苦痛より免れしめたり、爾後山に入るものは「奥山の姫まむし蕨の御恩を忘れたか」と唱ふれば其害を免る。(しの根とは茅根(かやね)のことなれどここは其鋭き幼芽のことなり)」

大正6年に出版された「日本伝説叢書・上総の巻」にも、同じ話が載っています。(コマ番号120/212)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/953567/120

「蝮と早蕨(さわらび) (長生郡二宮本郷村原田区)
ある時の事であつた。病気の蝮が、茅根(しのね)(こゝでは其鋭い幼芽の事)の上に倒れて、疲れきつて、動くことも出来ないでゐた。その時まで、まだ土の中にゐた早蕨は、此蝮の苦痛を大層憐れに思つて、柔かな手で、そつと蛇の體(からだ)を押し上げてやり、漸(やうや)くのことで、しの根の苦痛(くるしみ)から免れしめてやつた。それからこつち、山に入る者は、
『奥山の姫まむし、蕨の御恩を忘れたか。』
と唱へると、その害を免れることが出来た。」

「奥山の姫まむし」と呼ばわっているので、この蝮は雌の蛇だったらしいですね。
「なんでわらびへの恩なのに人間に言われて退散する必要があるのか?」という疑問については、おそらく蝮が茅根に突き刺されたことに対して大変屈辱を感じており、助けてくれた蕨の名前を持ち出されるとそのことを思い出して恥じ入ってしまい、おとなしく退散する、ということなのではないでしょうか?
ゲスト  投稿日時 2018/4/30 22:35
この話の初見は、大正4年に出版された「南総之俚俗」に収録されたもので、南方熊楠も「まむし除けに蕨のご恩云々の謎が解けた」とこの本を引用してたと記憶してます。
子供のころ、良く意味がわからないまま使ってました。
ゲスト  投稿日時 2017/5/15 17:17
はぇ~初耳ですね、参考になるなぁ・・・
ゲスト  投稿日時 2017/4/3 21:48 | 最終変更
(正論)てwww

昔話はその成り立ちとか呪文の根拠とか、そう言ったものを伝える役目もあるから。
この話はそのタイプでしょう。

同じような呪文には、
カッパよけ→「ひょうすえに約束せしを忘るなよ川立ち男我も菅原」
天狗よけ→「サバ食ったサバ食った」なんてのがあり、それぞれ根拠となる昔話が付いているので、それと同じかと。
ゲスト  投稿日時 2017/4/3 15:50
なんでわらびへの恩なのに人間に言われて退散する必要があるんですか(正論)
熊猫堂  投稿日時 2012/9/10 10:43
森川信英さんの描く動物は愛らしい姿をしたのが多いですが、このお話は特に森川さんの手腕が発揮された一編だと思います。
このお話のマムシ避けの呪文、子供の頃に良く真似しました(微笑)
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