藤四郎という百姓の家のお婆さんが山の池の近くを通った時、池で美しい娘が髪を洗っていた。
お婆さんが木の陰に隠れて様子を見ていると、娘がそれに気付いた。するとその瞬間、黒雲が湧き起り、池が渦巻きはじめ、その渦の中に女が入って行った。お婆さんが池の方を見ると、かんざしが一つ落ちていたので持って帰った。
家に帰ると藤四郎がそのかんざしを奪って「もう、貧乏暮らしとはおさらばじゃい」と言って家を飛び出した。藤四郎が家を出てかんざしを売りに行こうとすると、道すがら娘とすれ違った。娘を見ていると自分の家に入って行ったので、何事かと思い、藤四郎は破れた障子から自分の家の中を覗いた。
その娘は、お婆さんに「私は、遠くの国から来たものです。池で髪を洗っている時に、大事なかんざしを失くしてしまいました。もし、持っていれば返してください。私は、西に日が沈むまでにここを発ち、池の尻の村に嫁入りしなければなりません」と言った。
お婆さんは、娘に茶などを勧め、藤四郎が帰って来ることを信じ、娘と二人で藤四郎の帰りを待った。さて、一方の藤四郎は悩みに悩んだ挙句、家に戻って娘にかんざしを返してあげた。
それからは、この辺りで日照りが続いても、藤四郎の田んぼは山の池から水が流れこみ、枯れることはなくたくさんお米がとれた。きっと、竜女が恩返ししていたのだろう。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-9-17 14:58 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 石崎直義(未来社刊)より |
出典詳細 | 越中の民話 第二集(日本の民話55),石崎直義,未来社,1974年09月30日,原題「嫁入り竜女の忘れもの」,採録地「魚津市本江」,話者「広田寿三郎」 |
場所について | 話の池は僧ヶ岳中腹の池尻の池か? |
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