昔々ある所に、器量のいい娘ばかり揃って大繁盛している料理屋があった。店の評判はとうとう雲の上の雷さん達の所まで届き、自分たちも行こうと思った雷さん達は、下界に下りてきた。
最初に会った百姓に店の場所を聞いた雷さん達だったが、店に行くには銭っこが要ると言われても何のことやら分からない。言われるままに料理屋の隣の質屋に行って、銭貸してけろと言ってみたものの、質草は何だと聞かれてこれまたちんぷんかんぷん。
質屋の説明でようやく分かった雷さん達は、太鼓を預けて三両貰うと、勇んで店にやってきた。こうして始まった宴会だったが、これが飲めや歌えの大騒ぎで、しかも夜も昼もなく果てしなく続いた。料理屋はたった三両で幾日も飲み食いされ、娘達は休む間もなくヘトヘトになり、隣の質屋はうるさくて眠られず、更に雷が空を留守にしてしまったので夕立がさっぱり降らなくなって、百姓達までが大弱り。
皆で話し合って、太鼓を返すから帰って貰えるように頼んでみようということになった。ところが太鼓を恐る恐る差し出して話し出そうとすると、雷さん達その太鼓でもういっぺん質屋から銭借りてきて更に宴会を続けようと言い出し、皆大慌てとなった。
まさにその時、一人の娘が歌にのせて、巧みに雷さん達に雲の上を思い出させた。これでようやく気が付いた雷さん達は、突然の稲光と共に天に帰っていった。その晩から再び雷が鳴って夕立が降るようになり、畑の作物もすっかり元気になった。料理屋も、雷の来た店というので益々繁盛したという。
(引用:狢工房サイト)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | クレジット不明 |
出典詳細 | 「遠野の昔話」からの加藤瑞子さんの原作は「雷の女郎買い」 |
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