むかしむかし、九州の長崎の時津の浜の近くの村に、権助という怠けものの百姓が住んでいました。
時津の浜では年に一度、秋に近い一日に、百姓が海へ出て漁をして良い日が決められていました。代わりに山の畑には漁師たちが入り、野良仕事を楽しむことが出来るのでした。
この日、皆が楽しんでいるのを見て、権助も漁に出てみると、思いがけず鯖がたくさん獲れました。権助は獲れた鯖を皆に分けることをせず、時津街道を通って長崎の町まで売りに行くことにしました。
権助が時津街道の山道を登っていくと、右手の斜面に大きな岩があって、その岩の上にもう一つ大きな岩が乗っかっている所にさしかかりました。岩はグラグラと揺れて、今にも落ちてきそうです。権助は途方に暮れて、行こうか戻ろうか何度も迷っているうちに、とうとう日が暮れてきてしまいました。
すると、権助が背負った籠の中からプ~ンと嫌な臭いが漂ってきました。鯖は足が早い(腐りやすい)魚なので、籠の中の鯖は全部腐ってしまっていたのです。
権助がガッカリしていると、通りかかった村人が「この岩はグラグラ揺れてもけして落ちることはないんじゃ。このことを知らなかったのは、怠け者のお前だけじゃ。」と笑いました。
やがてこの話が人から人へと伝わり、この岩を『鯖くされ石』と呼ぶようになったそうです。
そして今でもこの岩は、長崎の時津に近い時津街道の森の間に見えるということです。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2012-5-23 23:29 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 吉松祐一(未来社刊)より |
出典詳細 | 長崎の民話(日本の民話48),吉松祐一,未来社,1972年07月20日,原題「鯖くされ石」,採録地「西彼杵郡時津町元村」,話者「横山秀一」 |
現地・関連 | お話に関する現地関連情報はこちら |
場所について | 西彼杵郡時津町の継石バス停近くの鯖くされ石 |
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