実際にお話を見たところ、冒頭部分を少し調整する予定ですので、取り急ぎ追記。2020年8月31日現在
ずっと昔、日本中にいろんな神様が住んでいて、この辺には猿田彦(さるだひこ)と呼ばれる神様が住んでいました。
ある時、猿田彦が椿の苗木を植えると、やがてとてつもない大きさに成長しました。香取・朝日・匝瑳あたりの空一面を覆うように広がった枝葉のせいで、地上は太陽の光も届かないくらいでした。その代りに、春になると見事な花が咲き天を赤く染め、散れば地面は錦を敷いたような美しいものでした。
ところが、この椿の巨木に、鬼満国(おにみつくに)という鬼の国の魔王が住みつくようになりました。この魔王はとても薄気味悪く、笑い声を聞くだけで小鳥は枝から落っこちるし、息をかけられれば心臓が凍えてしまう程でしたので、近くに住む人々は毎日の仕事も手につかない有様でした。
その頃、伊勢の五十鈴川ちかくに暮らしていた猿田彦は、この魔王の話を聞いて、天女から借りた羽衣で空を飛び急いで椿の巨木に駆けつけました。丁度、昼寝中だった魔王に向かって、天の鹿児弓(かごゆみ)を張り天の羽々矢(はばや)を射ました。
魔王のヘソに羽々矢が突き刺さると、魔王の体がずんずん大きくなっていきました。ヘソが痛くてしゃくにさわった魔王は、怒りにまかせて椿の巨木を満身の力で引っこ抜きました。そこで猿田彦が、魔王に刺さっている矢を引き抜くと、膨らんだ体から風船の空気が抜けるように、魔王ははるか彼方へ吹っ飛んでいきました。
いつしか、引っこ抜いた椿の跡に水がたまり、そこを「椿の海」と呼び、倒れた椿の木の上の方を「上総」、下の方を「下総」と呼びました。今ではもう椿の海は干上がって「干潟八万石」と呼ばれるとてつもなく広い田んぼとなり、豊かな米処となっています。
(紅子 2012-1-29 20:27)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 千葉のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 千葉のむかし話(千葉のむかし話編集委員会,日本標準) |
場所について | 椿の海(干潟八万石)周辺(広範囲のため地図は適当) |
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