昔、愛媛県のたけくら山のふもとの平地に「だばだぬき」という化けるのが上手な大狸が住んでおりました。
この「だばだぬき」は、お腹がへると村を襲っては畑をあらしていましたが、追いかけてきた村人すらも、そのままやりこめて逃げてしまうほどでした。
ある夜、「だばだぬき」は村のお婆さんの家に忍び込みました。そして置いてあった家の食べ物や味噌汁を好き放題に食べて帰る途中、急激な喉の渇きをおぼえました。いつもならこんなに喉が渇くはずがないのに、と思った「だばだぬき」は誰かに呪いでもかけられたのではないかと思いました。そして、「この間川の関を壊していたずらした「おいとかわうそ」のせいに違いない!」と思い込み、「おいとかわうそ」のいる川まで目の色を変えて走って行きました。
その頃、「おいとかわうそ」は壊された関の修理が終わって一息ついているところでした。そこへ大きな蟹が現れます。大蟹は「だばだぬき」が化けたものでした。歩き方の違う蟹、そして味噌汁の匂い。何かが化けたものだろうと思った「おいとかわうそ」はすかさず猿と青柿に変身。
そうやって、両者は一歩も譲らない化け比べに発展していきました。
そんな二匹のやり取りを面白そうに眺めているものがありました。お日様と追いかけっこしていて西の空へ急いでいるはずのお月様でした。お月様は面白がってたけくら山のてっぺんあたりで二匹のやり取りを眺めているうちに、とうとう東の空からお日様が登ってきてしまいました。
日が昇って、二匹は神通力を使い果たしてヘトヘトになってしまいました。だばだぬきが「どっちが勝ったんだ!?」と聞くと、おいとかわうそは「知るもんか、あのぼんやりしたお月様にでも聞いてみろ」と答えました。
それからです。日が昇っても恥ずかしそうにぼんやりと見えるお月様が見えるようになったのは。そして、そんな月を「あさつき」と呼ぶそうです。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-9-23 21:04)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 愛媛のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 愛媛のむかし話(各県のむかし話),愛媛県教育研究協議会国語委員会、愛媛県教育会,日本標準,1975年11月10日,原題「追いつかれたお月さま」,話者「吉岡忠」,再話「山本芳和」 |
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