昔々ある所に、大黒様という神様がいました。毎年、子の月(12月)は大根の収穫シーズンで、村人たちは12月9日に「耳あけの日」として、大黒様に豊作祈願をしていました。
大黒様が村人たちと楽しく触れ合っている様子を、北の山から悪い神様たちが見ていました。この悪い神様たちは大黒様の人気に嫉妬し、二人で相談して大黒様を殺す計画をたてました。
その計画は「大黒様の大好物のお餅を大量に食べさせて腹をはじけさせよう」というものでした。悪い神様たちは、大黒様を自分たちの屋敷に呼びつけ、大量の餅を一人で食べるように強要しました。
しかし大黒様は、そんな悪いたくらみの事など気づきもせず、たくさんの餅を一人で平らげ、大満足で帰路につきました。ところが帰っている途中、さすがの大黒様のお腹も餅でパンパンに膨らんで歩けなくなってしまいました。
そこへ、大根を沢山持った娘(女中)が通りかかり、大黒様は「大根を食べれば治るから、少し分けてほしい」とお願いしました。娘は、いくら大黒様でも雇い主の大根を勝手にあげるわけにいかず、ほとほと困ってしまいました。
ところが運よく、二股に分かれている「股ワレ大根」を見つけた娘は、一つの股をポキンともぎって大黒様に渡しました。これなら大根の数は減らないので、娘が雇い主から怒られることもありません。
大黒様も安心してもぎった大根を食べて、腹痛も治まりました。こんな事があってから、毎年の耳あけの日には、大黒様に「股大根」をお供えするようになったそうです。
(紅子 2012-11-26 4:01)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 山形県 |
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