昔、ある山奥に親子三人が暮らす一軒家がありました。
ある日、おっとうが油を買いに村へ行く途中で、子供たちに棒でたたかれている一匹の狐を見つけました。可哀そうに思ったおっとうは、狐を買い取り、そのまま逃がしてあげました。
その後、おっとうが油を買って家に帰っていると、急にあたりが暗くなり、華やかな嫁入り行列が現れました。おっとうは誘われるがまま結婚式に出席し、その夜は花嫁の家に泊まる事にしました。
寝床を準備してくれた花嫁は、「決してこの長持ちの箱の中を見ないで下さい」と念を押しました。しかしどうしても箱が気になったおっとうが、こっそり箱を開けてみると中には鏡が貼ってありそこにはキツネの顔が映っていました。
おっとうは、何のことやらわからないまま眠りにつきましたが、翌朝目を覚ますと自分の顔がキツネになっていました。こんな姿では家にも帰れないと、おっとうは花嫁の家に置いてもらう事になりました。花嫁は大変喜んで、毎日毎日たいそうなおもてなしをしてくれました。
毎日を楽しく過ごし、三年が経った頃、おっとうは家に残してきたおっかあと子どもの事が気になり始めました。泣いて引きとめる花嫁に別れを告げ、おっとうは顔を見られないようにしながら、家に帰りました。
しかし、家に帰ったおっとうの顔は、キツネではなく人間の顔で、三年と思っていた月日も実は三日しかたっていませんでした。おおかた、助けたキツネが恩返しのつもりで、花嫁に化けておもてなしをしたのでしょう。
(紅子 2012-8-15 0:59)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 三丘社刊より |
出典詳細 | 里の語りべ聞き書き 第01巻,川内彩友美,三丘社,1986年04月10日,原題「きつねの嫁入り」 |
VHS情報 | VHS-BOX第4集(VHS第37巻) |
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