大阪の民話(未来社,1959年01月30日)に、同タイトル名のお話があり「このお話かもしれない」ということであらすじを書いてみます。
むかし、大阪に茗荷屋清七と草花平四朗という二人の腕の立つ彫刻師がいた。お互いに「わしの腕が上や」と言って譲らず、ある日、平四朗が腕比べをしようと清七に持ちかけた。すると、清七も二つ返事でこれを了承し、一ヶ月後に勝負となった。
町は二人の勝負話で持ちきりとなり、しまいには喧嘩まで始める始末。その間、平四朗は一心不乱に脇目もふらずノミをふるい、清七は毎日ブラブラとうろついては、酒を飲んでばかり。そして、いよいよ勝負は明日という日になって、仕事場へと入った。
勝負の日。見物人が誰が勝つのかワイワイと騒いでるところへ、平四朗が木箱を抱えてやってきた。取り出された彫り物は見事な牡丹の花で、見物人たちからは感嘆の声があがり、誰もがその出来栄えに本物かと目を疑った。そこへ清七が手ぶらでフラリと現れた。何もできへんかったんかいなと見物人がガッカリしていると、清七は懐から一匹のネズミの彫り物を取り出して見せた。牡丹の花とネズミでは勝負にならない。誰もが開いた口がふさがらず、誰もが平四朗の勝ちかと思った。
その時、一匹の猫が飛び出し、清七のネズミに飛びついて、口にくわえたまま走り去ってしまった。これを見た見物人たちはあっけにとられたが、「猫がくわえていきよった。牡丹が立派なら猫は牡丹の下に眠るはずや。ネズミをくわえていったのは本物に勝るとも劣らないっちゅうこっちゃ」と感心し、清七の出来栄えに軍配が上がった。平四朗は自分から言い出した勝負だけに、悔しいことこの上もなかったが、すごすごと引き上げていくしかなかった。
ところが、この猫。ネズミをくわえて、縁の下でガリガリやっている。それを見物人の一人が見つけ、オヤ?と思った。よく見ると、それは木を彫ったものではなく、カツオ節を彫ったものだった。しかも、清七が猫まで用意して、仲間に連れ込ませていたことまで分かった。
これには誰もが「なんや、清七はんの策略にまんまと引っかかってしもうたんやないか」と怒り、腹が立てたが、「しかし、清七はんは知恵があるやないか。えらいこと考えたもんやで」と、改めて感心したということだ。
(投稿者: araya 投稿日時 2011-12-21 19:53 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | (表記なし) |
備考 | 大阪の民話(二反長半,未来社,1959年01月30日)原題「牡丹の花とねずみ」採録地は大阪市 |
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