No.0869
とびのちょうじゃ
鳶の長者

放送回:0546-B  放送日:1986年05月03日(昭和61年05月03日)
演出:三善和彦  文芸:沖島勲  美術:西村邦子  作画:三善和彦
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あらすじ

むかしむかし、ある所に貧しい若者がおって、おっとうと二人で小さな畑で蕎麦を育てたり、焙烙(ほうろく)を焼いて売ったりして暮らしておった。おっとうは達者じゃったが、最近、少しばかり耄碌(もうろく)してきておったそうな。

ある年の秋、村は激しい嵐にみまわれ、若者の蕎麦畑はすっかり荒らされてしもうた。このままでは冬を越せないので、若者は焙烙をたくさん焼いて、山向こうの 海辺の町まで売りに行くことにした。土をこねてろくろを回し、若者とおっとうは何日もかかって焙烙を作った。そうして、窯詰めが終わると、若者はおっとう に明日履く草鞋(わらじ)を作るように頼み、自分は一晩かかって焙烙を焼き上げた。

翌朝、若者はおっとうが作った草鞋を受け取った。じゃ がそれは、長い毛があちこちからはみ出したままの、出来損ないの草鞋じゃった。「おっとう、草鞋も満足に作れんほどボケちまったんか……。」若者は哀しい 気分になったが、微笑むおっとうを見ると気を取り直し、「おっとう、ありがとう。行ってくるよ!」と、元気に家を出発した。

若者はおっと うの作ってくれた草鞋を履き、重い焙烙を担いで山道を登っていった。やがて、ようやく目指す海辺の町が見えてきた。と、その時、若者は草履の長い毛を踏 み、あっという間もなく転んでしもうた。ガシャーン!!!苦労して焼き上げた焙烙は、一つ残らず割れて散らばった。

若者は呆然と割れた焙 烙を眺めておったが、やがて頭を抱えて座り込んだ。しばらくして若者がふと顔を上げると、たくさんの鳶が飛んでおった。鳶は次々と舞い降りてきて、焙烙の 欠片を摘んでは一箇所に集め始めた。やがて、いつの間にか鳶の姿は消え、目の前に焙烙の欠片が積み上げられておった。若者がそれを取り分けてみると、中か ら金銀小判がざくざくと出てきたそうな。

若者はその金を元手に働いて、やがて『鳶の長者』と呼ばれる大金持ちになり、おっとうと二人幸せに暮らしたそうな。

(投稿者: ニャコディ  投稿日時 2013-1-3 14:49)


ナレーション常田富士男
出典武田明(未来社刊)より
出典詳細讃岐の民話(日本の民話05),武田明,未来社,1958年01月31日,原題「鳶の長者」,採録地「香川県丸亀市広島町」,西讃岐昔話集より
場所について塩飽諸島のいずれかの島
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地図:塩飽諸島のいずれかの島
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※掲載情報は 2013/1/3 19:29 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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もみじ  投稿日時 2013/1/4 11:01
こんなの履いていけない!と怒ることもできます。
受け取るだけ受け取って、違う履物を用意することもできます。

それでも親が用意してくれたものを、素直に受け取って元気に家を出て行った若者…。

親の心を大切にした若者への天からの贈り物ですね(・ω・)♪
araya  投稿日時 2011/11/29 4:45
『讃岐の民話』(武田明,未来社)によると、香川県丸亀市広島町で採録された話とのことですが、話中の「山一つ越えた海辺の町」が特定できませんので、採録地の広島という塩飽諸島最大の島でマッピングをお願いします。

http://g.co/maps/d647f
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