昔ある所の山寺に、和尚さんと小僧さんが住んでいました。
ある時、二人はおいしい煮豆を作りました。和尚さんは煮豆を湯呑に入れて、小僧に隠れて便所でこっそり食べていました。小僧さんはというと、和尚さんに隠れてこっそり煮豆を食べようと、湯呑に入れて便所へ向かいました。
便所の戸を開けた小僧さんは、先客の和尚さんとが鉢合わせしてしました。小僧はがっかりして「和尚さん、お代わりです」と、煮豆の入った湯呑を差し出しました。
まぁこんな具合に毎日を過ごしていた二人ですが、ある十五夜の晩、和尚さんは里芋を食べたくなりました。そこで和尚さんは、百姓の畑から里芋を盗んでくるように小僧さんに言いつけました。
和尚さんは嫌がる小僧さんを説得し「畑では、起きろ起きろ、と言って掘れよ」と言い聞かせて、畑に行かせました。
月明かりの中、小僧さんが畑で里芋を掘り起こしていると、案の定、百姓に見つかってしまいました。百姓は「人の物を盗むなんて和尚もくそもあるか!」と激怒し、小僧さんの首根っこをとっつかまえて寺へ乗り込んできました。
怒っている百姓に向かって、和尚さんは「十五夜の 芋の子供の寝入りしを 月見よと 起こすが、なんで腹立つ」と、一句読み上げました。このあたりでは、芋を掘ることを「起こす」と言うので、百姓はぐうの音も出ませんでした。
和尚さんにやり込められた百姓は、怒りを収めながら「十五夜だから芋を起こされても仕方がありません、その代りに食べたりはせずに、ちゃんと芋に月見をさせてやって下さいよ」と言って、帰っていきました。
それからというもの、このあたりでは十五夜の晩には里芋を供えることになったそうです。
(紅子 2013-9-27 18:46)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 松谷みよ子(講談社刊)より |
出典詳細 | 日本の昔ばなし02,松谷みよ子,講談社,1978年1月15日,原題「芋の月見」 |
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