昔ある所に足の速いのを自慢にしているうさぎがいた。しかしカメはそのことが気にくわず、うさぎを毛嫌いしていた。そこへカメの子分のふくろうがやって来て、何やらカメに入れ知恵をした。
ある日うさぎがいつものように野原を走っているとふくろうが「うさぎどんはたいそう足が速いそうだが、カメどんにはかなうまい。カメどんの足の速さは天下一じゃからな」と言った。それを聞いたうさぎはカメがオレより速いわけがない、駆け比べをしろと言ってきた。そこでうさぎとカメは駆け比べをし、うさぎはあっと言う間にゴールに着いた。
ところがどういうわけか、すぐ引き離したはずのカメがそこで汗をふいていた。驚いたうさぎはもう一度やろうと言って、今度は元来た道を駆け戻った。
するとまたまたカメがそこにいた。うさぎはどうしても負けたことが信じられず、何度も何度も行ったり来たりして駆け比べをしたが、何度やってもカメはうさぎより先にゴールに着いていた。うさぎは悔しくて悔しくてひとしきり泣き、とうとう泣き過ぎて目が真っ赤になってしまった。
うさぎはとぼとぼと帰っていったが、実はカメには双児の兄弟がいて、ひとりずつ反対のゴール地点にいただけだった。うさぎの悔しそうな姿を見てカメとふくろうは大喜びだったが、そこへ神様がやって来て、うさぎを騙したカメとふくろうを叱りつけた。
そして杖でカメの甲羅を強く叩き、カメの甲羅にはヒビが入ってしまった。そしてカメに悪い入れ知恵をしたふくろうは、お天道さまの下に置いておくわけにいかないと、夜しか目が見えないようにしてしまった。
うさぎの目が赤く、カメの甲羅にはヒビが入り、ふくろうが夜しか目が見えなくなったのはこういう話があったからだそうだ。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 瀬川拓男(角川書店刊)より |
出典詳細 | 動物の世界(日本の民話01),瀬川拓男,角川書店,1973年5年20日,原題「うさぎ・亀・ふくろう」,伝承地「近畿地方」 |
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