No.0841
おにむすめ
鬼娘
高ヒット
放送回:正月特番  放送日:1986年01月02日(昭和61年01月02日)
演出:高橋良輔  文芸:沖島勲  美術:中村和子  作画:金海由美子
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あらすじ

昔々、ある村にお爺さんとお婆さんが住んでおった。この老夫婦には、1人の気立てのよい娘っ子がいて、年老いた両親の世話をよくしていた。この娘、働き者の孝行娘であったが、1つだけ困ったことがあった。それは、普通の人の2倍も3倍も体が大きかったのだ。

この娘、さらに大変な力持ちで、ある時言うことを聞かなくなった暴れ馬が道を突進してくると、なんとその馬を両手で高々と持ち上げてしまい、馬をおとなしくさせてしまったのだ。そんな訳で、村の子供たちからは毎日のように「鬼娘、鬼娘」と囃し立てられ、からかわれていた。

そんなある日、娘が山に薪を取りに行った帰り道のこと。1人の村の若者が、薪を背負ったまま道端に腰を下ろしていた。若者は、薪を拾いすぎて歩けなくなってしまったと言うのだ。それを聞いた娘は、薪を背負ったままの若者をヒョイと自分の肩に乗せると、そのまま山道を降りて行った。

村の中で娘のことを馬鹿にしないのは、この若者だけであった。山道を下る途中、若者は、娘に自分のところに嫁に来てくれるように頼んだ。ところが娘は、「オラ、嫁になんか行かねえ!!こうして働いている方が性にあってるだ!!」といって、この話を断ってしまう。

娘は、実は若者のことが好きだったのだが、もし自分と夫婦になれば、若者は村の衆から鬼娘の亭主と馬鹿にされると思い、それが可愛そうで嫁入りの話を断ったのだ。

そうは言っても、やはり若者のことは頭から離れない。娘は次の日、物思いにふけりながら道を歩いていた。すると娘は知らない間に山の奥深くにまで入り込んでいた。そこは、娘が一度も来たこともない場所で、娘の目の前には深い淵が広がっていた。

するとその時、どこからか娘を呼ぶ声がする。声は、淵の反対側の松と杉と檜(ひのき)から聞こえてくるようだった。不思議な声は言う。「これ娘や、我の影に向かって飛び込め。お前は心の優しい感心な娘じゃ。我の影に向かって飛び込め。」

淵は深そうだったが、娘はこの声の言うとおり、水面に映る木々の影に飛び込んでみることにした。すると淵の水を浴びた娘は、不思議なほど心が素直になり、若者の申し出を受け入れて、若者の嫁になったそうだ。そして2人は子宝にも恵まれ、以後幸せに暮らしたそうな。

 

(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-11-26 11:49)


ナレーション常田富士男
出典斎藤正(未来社刊)より
出典詳細津軽の民話(日本の民話07),斉藤正,未来社,1958年05月15日,原題「鬼娘」,採録地「弘前市石川町字大沢」,話者「桜庭もと」
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※掲載情報は 2011/11/26 11:49 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
6件表示 (全6件)
華煌  投稿日時 2020/2/17 15:53
彼女は純粋無垢な娘さんという感じを受けました。
独身の女性なら誰しもこの娘さんのような心境を抱いたことがあると思います。
彼女の両親は、さりげなく彼女を見守り、
村の人々や子どもたちも、からかってはいるものの、
彼女に悪気はなさそうです。
「鬼婆の羽織」の主人公のように、容姿を見初められて、
危うく身勝手な相手を選びかけることもなく、
心から思ってくれるすばらしい相手と結ばれることができました。
すばらしいおはなしを見せて頂きました。
いつもありがとうございます。
匿名希望。  投稿日時 2019/10/15 12:20
ワイルドな娘さんだねぇ~。(笑)
yassan  投稿日時 2018/6/15 9:56
そうですね。ご指摘ありがとうございました。分類を青森県に訂正しました。
ゲスト  投稿日時 2018/6/13 16:20
秋田県に分類されているが、出典を見ると青森県の話では?
ゲスト  投稿日時 2018/1/19 0:44
この明るく気丈でも繊細な主人公の女性を応援したくなります。
ゲスト  投稿日時 2014/10/13 22:47
男勝りなおなごほど、内に秘めた乙女心はでっかいもんです
若者は娘の見事な働きっぷりはもとより、そういう隠れた女らしさにも気付いてたんでしょうなあ
何か、今の肉食系女子と草食系男子のようなカップルですね(笑)
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