昔、あるところに物持ちの家と貧乏な水車小屋の家とがあった。水車小屋の家は、麦や粟のもみ殻をとる貧しい商売だったが、一家で朝から晩までよう働いておった。一方、物持ちの家の商売はあこぎな金貸しで、貧乏な水車小屋の一家をいつもばかにしておった。
ある日、旅の坊さまがずぶぬれで通りがかった。坊さまは宿を求めたが、物持ちの家は
断った。水車小屋の家はあたたかく迎え入れ、粗末ながらももてなした。坊さまは翌朝願いがかなうという3つの玉をお礼として置いていった。
水車小屋の一家はひとつずつ玉を手にしてそれぞれ願をかけることになった。じいちゃん、おっとう、おっかぁの順に黙って願をかけると、不思議なことにそれぞれの玉は消えた。実は3人とも同じ、「家族みんなが達者で暮らせますように」という願をかけたのだった。
これを見ていた物持ちの夫婦は、坊さまを追いかけ連れてきて、無理やりに食事を与え、3つの玉をくれるように坊さまに迫った。こうして玉を手に入れた2人はそれぞれに願をかけ、きれいな着物100枚と米が詰まった米蔵100棟を手に入れた。最後のひとつの玉は取り合いとなり、物持ちが玉を握ったまま「鬼ばばめ、角でも生やして鬼になればよいわ」と言った。すると玉は消え、ばばに角が生えて本当の鬼となってしまったのじゃった。
物持ちは鬼になったばばと暮らしたくなかったが米蔵を捨てることもできず、ばばとけんかしながら暮らしたとのことじゃ。一方、水車小屋の一家は相変わらず貧乏だったが、だれも病気になることなく、いつまでもまめに暮らしたということじゃ。
(投稿者: もげお 投稿日時 2012-3-22 20:20 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 東北農山漁村文化協会(未来社刊)より |
出典詳細 | みちのくの民話(日本の民話 別1巻),東北農山漁村文化協会,未来社,1956年06月10日,原題「三つの願い」,話者「福島県相馬市相馬高校教諭の岩崎敏夫」 |
場所について | 福島県(出典より) |
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