昔、村里離れた山の中に、小屋掛けしている若者がいた。本当は百姓なのだが、それだけでは生活できず冬になると猟をしないといけないのだ。
山は白一色になり、若者の小屋には沢山のかねっこおり(つらら)ができ、その中でも毎年おなじ所に出来る大きなツララが特に気にいっていた。ある朝、そのツララがさらに大きく成長して入り口をふさいだ為、若者は小屋の外に出ることができなくなった。仕方なくツララを切り倒そうと斧を振り下ろすと、一瞬だが赤い血しぶきが散ったように見えた。
その夜、ものすごい吹雪の中、御高祖頭巾(おこそずきん)の二十歳くらいの女が若者の小屋にやってきた。若者は気の毒に思い、夕飯をたくさんご馳走し、囲炉裏(いろり)を囲んでいろいろと話をした。今朝の出来事であるツララを切り倒した事に話が及ぶと、女は険しい顔をして理由を尋ねた。若者は、里に年老いた病気の母がいる事、毎日猟をしないといけない事、本当は切りたくなかった事、を女に話した。優しい男の話を聞いていた女は、「ぜひ嫁になりたい」と言いだし、その晩のうちに若者の嫁になった。
深夜、寒さで目を覚ました若者が、隣に眠る美しい嫁を見つめながらウトウトしていていると、女の声がした。「私は切り倒されたかねっこおりです。あなたを凍死させようと来たのですが、優しいあなたを殺せません。さよなら」若者は、急いで女が寝ていた布団をめくると、細くなったツララがそこにあった。
(紅子 2011-11-11 3:58)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 水澤謙一(未来社刊)より |
出典詳細 | 越後の民話 第一集(日本の民話03),水澤謙一,未来社,1957年10月10日,原題「かねっこおり女房」,採録地「小千谷市首沢」,話者「川上新太郎」 |
場所について | 小千谷市首沢(現在の小千谷市南荷頃の首沢地区、地図は適当) |
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