ある田舎に、機織りの上手な二人の嫁さんが隣同士で住んでいました。見栄っ張りな嫁さんは「細い糸の美しいのが良い」とし、もう片方の嫁さんは「丈夫なのが良い」として、お互いに一歩も引かず毎日ケンカばかりしていました。
ある年、秋祭りに着ていく着物を作ろうと、二人の嫁さんは必死に機を織っていました。見栄っ張りの嫁さんは、村で一番目立つような美しい着物をと丁寧に丁寧に織っていました。もう片方の嫁さんは、姑さんの着物を先に仕上げて、自分の着物は大急ぎで太い糸を使って粗く織りあげました。結局、丁寧に織っていた見栄っ張りの嫁さんの方が、秋祭りの日までに仕上げることができず、仕方なく大きな瓶(かめ)の中に入り、亭主に背負わせて秋祭りに出かけました。
ところが、祭りの出店前で二人の嫁が出くわしてしまい大げんかを始めました。織りの粗い着物を着た嫁と、瓶に入ったぶざまな嫁は、お互いに「みっともない恥かき嫁だ」とののしり合いました。大勢の見物人が集まる中、とても耐えられなくなった亭主は、背負った瓶を放り投げて逃げ帰ってしまいました。
放り出された瓶は粉々に割れ、見栄っ張りの嫁さんは大勢の前に裸で投げ出されました。しかし、瓶の口のところだけは割れず嫁さんの首に綛(かせ)のように残っていました。裸の嫁さんは、あまりの恥ずかしさに身をよじり地面の中にいじり込み、これが首に白い輪のある「かせかけみみず」になったそうです。
(紅子 2011-10-17 21:25)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | ふるさとの民話(偕成社刊)より |
出典詳細 | 長崎県の民話(ふるさとの民話35),日本児童文学者協会,偕成社,1982年6月,原題「かせかけミミズ」,採録地「芦辺町」,再話「大町正」 |
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