むかしむかし、ある山に古い小さな丸木橋があって、橋の下に一匹のサルが住んでおった。ある日のこと。橋の真ん中で、一匹のイヌと一匹のネコが鉢合わせしたそうな。元々イヌとネコは仲が良くないので、ちょうど退屈していたサルはこりゃあ面白そうじゃと様子を見ておった。
「邪魔じゃ。どけ!わん!」「にゃ~にが邪魔じゃ!」案の定、二匹はどっちも後に引かず、とうとう取っ組み合いの大喧嘩を始めちまった。じゃが、なんせ狭い橋の上じゃ。イヌは足を滑らせて落っこちそうになり、慌てて橋に絡まったツタを咥えてぶら下がった。
それを見たネコは大喜びで囃し立てた。イヌは思わず怒鳴り返したもんじゃから、川の中にまっさかさまに落ちてしまった。ネコはもう、腹を抱えて大笑い。「にゃっはっはっ!間抜けなイヌだにゃん!にゃにゃッ!?」笑い過ぎたネコも足を滑らせて、川に落っこちてしもうた。
川に落ちた二匹は魚を見つけ、急に腹が減っていることを思い出した。じゃが、イヌが捕ろうとした魚をネコが捕ってしまったので、またまた喧嘩が始まった。サルはそこでおもむろに喧嘩の仲裁に入ったが、イヌもネコも魚は自分のものじゃと言うて後に引かんかった。
そこでサルは「それならこの魚をちょうど半分に分けてやろう。」と、魚を真ん中あたりで二つに切り分けたそうな。すると「ネコの魚の方が大きいわん!」とイヌが怒るので、サルはもう一度ちょうど良く分けてやると言って、ネコの方の魚を少しだけ食べたそうな。
すると今度は「とんでもにゃあ、俺の方が小さくなった!」とネコが怒るので、サルは今度はイヌの方の魚をもう少しだけ食べた。するとまたイヌが怒りだし、サルはネコの魚をまた少し食べて…。こうしてサルは交互にイヌの魚を食べ、ネコの魚を食べして、とうとう魚を全部食べてしもうたそうな。
サルが去った後しばらくして、ようやくイヌとネコはサルにまんまとやられたことに気がついた。イヌとネコは散々悔しがったが、もう後の祭り。そしてこの時以来、サルとイヌとネコは、いつも仲が悪くなったんじゃそうじゃ。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2013-6-8 20:01 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | ふるさとの民話(偕成社刊)より |
出典詳細 | 大分県の民話(ふるさとの民話44),日本児童文学者協会,偕成社,1983年6月,原題「サルの仲裁」,採録地「東国東郡国東町」,再話「田城擴」 |
場所について | 東国東群国東町で採録(出典元地図より) |
このお話の評価 | 8.75 (投票数 4) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧