昔、京都の丹波に与助という一人暮らしの若者が住む村がありました。与助は両親を相次いで事故で亡くしてから、人と話す事もなくなり仕事もあまりしなくなりました。
その年は雨が少なく、田畑の作物のほとんどが枯れてしまい、村人たちは困り果てていました。そんな時、与助の家が火事で全焼し、与助は何もかも失ってしまいました。村人たちは、みんなで与助の面倒をみる事に決め、寝起きは長老の家で、食べ物は皆で少しずつ持ち寄って親切に世話してあげました。
とうとう川の水もすっかり干上がってしまい、こうなったら雲岩寺(うんがんじ)の阿か池の水をひくしかないのですが、竜神が住んでいるのでたたりを恐れて誰も池に近づけませんでした。その様子を知った与助は、阿か池へ行って「自分の命と引き換えに村に水を引かせてください」と一心に拝みました。すると、多聞天さまが現れて「阿か池の水はやれぬが、命と引き換えに雨を降らす方法を教えてやろう」とお告げになりました。
与助は長い竹竿を用意して、多聞天さまから言われた通り、阿か池の水をかき混ぜました。すると阿か池から竜が現れ、空に向かってかけのぼり風を起こし雨雲を呼び、またたくまに大雨を降らせました。竜は「命は助けてやるから一生懸命働きなさい」と言って、阿か池へ戻っていきました。
それからの与助は人が変わったように村人たちの先頭になって働くようになりました。この事があってから、阿か池に雨乞いすると雨が降る、と今でも言い伝えられています。
(紅子 2012-1-26 0:21)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 京都府 |
場所について | 雲岩寺跡(雲岩公園) |
講談社の300より | 書籍によると「京都府のお話」 |
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