昔、神奈川県川崎市の 医王寺(いおうじ)の庭には池があり、カニがたくさん住んでいた。
毎日毎日お寺の鐘が鳴ると、池のコイもカニも一斉に顔を水面に出し、じっと目を閉じてありがたい鐘の音を聞いていた。この時ばかりは一番怖いシラサギも、魚やカニを襲って食べる事はなかった。
ある日、お寺が大火事になった。カニたちは、いつもシラサギから身を守ってくれる寺の鐘に感謝していたのだろう。たくさんのカニが出てきて、鐘つき堂(鐘楼)を覆い尽くし、泡を吹いて火事から鐘を守った。
火事が収まった後、鐘つき堂の周りにはたくさんのカニの死骸があった。それらのカニはすべて、火事で背中が焼けて真っ赤になってしまっていた。
寺の和尚さんはこれらのカニを丁寧に供養し、わずかに生き残ったカニを池にもどしてやった。この後、医王寺の池に住むすべてのカニは、背中が赤くなったということである。
(投稿者: カケス 投稿日時 2013-9-8 20:32 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | ふるさとの民話(偕成社刊)より |
出典詳細 | 神奈川県の民話(ふるさとの民話8),日本児童文学者協会,偕成社,1978年10月,原題「せなかの赤いカニ」,採録地「川崎市」,再話「萩坂昇」 |
場所について | 川崎の医王寺 |
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